第10話 空っぽの回答

合格発表の日の午後三時過ぎ。


私はいつものように、コーヒーを沸かしていた。


外の空気はまだひんやりしている。


冬も終わりというのに、この村では遅くまで雪が降る。


昨日も降っていたようだが、今日は快晴でよかった。


空が蒼い。


そして地面も同じ色であった。


雪解け水に、蒼い美しい空が表れていた。


視界は蒼でいっぱいだった。


いつもとは違う、綺麗な風景だった。


しかし今は何故か綺麗と思えない。


枯れた木、風だけの音、そして視界いっぱいの蒼。


それらは綺麗というか、少し寂しかった。


結果がどうであれ、彼らは今日で羚庵堂を去る。


教師とはいつまでも取り残される。


何度も何度も、手塩にかけた子供達の旅立ちを見る。


教師は亡霊みたいなものだな。


その場所から去れず、いつまでも生徒を送るだけ。


生徒を育てることに憧れを持ち、教師を目指す人は多い。


文香だってそうだった。


彼女はどう考えていたのだろうか。


……決まってるか。


全ての生徒に等しく全力を注いでいた彼女だ。


悲観などしていたはずがない。


いつまでも、私だけが遅れている。


来年………………いや、そろそろ潮時か。


私の頭に考えがよぎった瞬間であった。


蒼い世界の奥からミサキとシンが涙を流しながら走ってきたのは——————














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