第3話 何かのために

この封筒は一体……?


宛先が無ければ、氏名も書かれてない。


村長からなにかの連絡事項だろうか?と思い私はその場で中身を確認した。


「お久しぶりです。今も元気でいらっしゃるでしょうか。子供達は塾で元気に過ごしているでしょうか。あなたに書きたい事はたくさんあるのですが、それはまた今度にしようかな。私にはやり忘れた事があるのです。また内容は順を追って送ります。それでは、よしなに。」


それだけだった。


「…………?」


急すぎる内容に、私の脳は追いつけなかった。


改めて見ると、何個か不思議な点があった。


子供達は元気に過ごしているか?


やり忘れた事?


そしてそれらの意味は私の知っている一人の人物に全て当てはまった。


妻だ。


しかし、私の妻はもう……。


しかしだとしたら一体誰が?何のために?


これはイタズラなのか?


それに、自分で妻と断定していたが、彼女のやり忘れた事とは……?


わからないことだらけだ。

ひとまずこれは置いておこう。

私はとりあえず封筒を保管し、今日の講義の準備を始める事とした。


今日の講義は確か今年中学受験をするシン、レン、ミサキの3人だ。


私が休んでしまっていたため、もう冬休みしか時間がない。

彼らは田舎を出て、都会の方の難関な学校を志望していた。その想いに応えるため、全力を尽くさねばならない。


私は遠い朝日に向かって誓った。


「どこかからでも見ていてくれ。私が彼らの望みを必ず叶えてみせる。」


手紙の中身はわからないが、それがもしかしたら彼女の望みだったならば、それは私の望みでもある。

答えてくれたのは、秋の朝の冷たい風だけだったが不思議と嫌な感じはなかった。









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