お題『祝う』/それはとてもしあわせなことだから

はらはらとみなの目から涙が落ちる。長い夜、夫は妻の手を握っていた。妻は、あなたは、気がついていましたか?

静かな部屋だった。いや、外の喧騒は続いていた。ただ、ここに静寂が訪れたのだ。

産まれてくるとき、明け方が多いと聞いた。潮の満ち引きが関係しているそうだ。ああ、目の前に関係ないことに思考が飛ぶ。ベッドを囲む誰もが何も言わず、それぞれに苦労や幸福に思いを馳せているのか、潤んだ目を擦ったり、鼻をすする。それとも私のようにまったく違うことを考えたりしてるのか。

もう苦しまなくて済むひとは口許を緩くほころばせ、うっすらと笑みまで浮かべているよう。

おめでとう、おめでとう、さようなら、おばあちゃん。

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