第6話 都の便り・一

 新緑の葉が厳しい日差しを浴び風雨にさらされ、落ち着いた色に変わった頃。暁原の都では、新しい噂が流れるようになっていた。


 かぐや姫が望んだ誠の証である、古の賢者が用いた玉の鉢を交易商人から手に入れたというしま皇子は、さっそくかぐや姫に見せた。しかし姫と老夫婦がよく調べてみれば、それは外法師の術で石鉢を変じさせただけのもの。皇子は、外法の術に頼ってかぐや姫を謀り、得ようとしたのだ。この不誠実に怒った老夫婦は石鉢を皇子に突き返すのだが、それでも皇子は懲りずに言い寄ろうとするのだから、呆れるしかない。さすがのかぐや姫も我慢ならず、二度と顔も見たくないと、絶縁を突きつけたという話だ――――――――


 貴族も庶民も問わず、人々は恥を恥とも思わないこの皇子を笑い者にし、即席の芝居や歌にして一部始終を都中に広く知らせた。弟たる帝もこのことを耳に挟み、我が兄ながらみっともないと苦言を呈したという。その結果、やがて皇子は自邸に引き籠って朝廷に顔を見せなくなり、それもまた人々の話の種となった。

 そして、次は誰が失敗するのかと、人々は心待ちにした。

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