C2 / 稚拙なる第一稿

タイトル: 未定


監督:森守和月

脚本:宮元祐鶴


序幕  最後の戦い前夜


第一幕 回想


第二幕 リクとレヒト、対話(予定)


第三幕 殺陣+終幕(予定)



筋書き

リクとレヒトは互いに変身ベルトを装着し、変身すると、二人で一人の体を共有する、名も無き仮面の戦士へと変身出来るヒーローである。


ハットを被った少年「リク」 演:宮元祐鶴

突然現れた異次元の化け物に瀕死の重傷を負わされ、再起不能になった父の探偵事務所を引き継いだ。


異次元からやってきた美少年「レヒト」 演:森守和月

リクが住む次元に現れた化け物達を退治するために、化物と同じ異次元からやってきた少年。


仮面の戦士 演:森守和月

リクとレヒトが体を一つにして変身した姿。異次元の対怪物用兵器であるベルトを使って変身する。


怪物 演:宮元祐鶴

異次元からやってきた最強の怪物。

リクの父を傷つけ、名も無き戦士の反撃に遭って逃亡。異次元からやってきた化物の最後の生き残り。



序幕


――セット 岩場


第一場


――緞帳開



照明消灯 スポットライト、中央のリクとレヒト。


リクとレヒトが、岩場の前に立つ。


リク「いよいよ最後の戦いだな」


レヒト「うん。最初に取り逃がした奴。あいつがこの次元に逃げ込んだ十体の怪物の、最後の一体だよ」


リク「これで、お前の次元も救われるんだな?」


レヒト「うん……僕の住む次元は小さいんだ。このまま怪物達が僕の次元と、リクの次元を繋げたままにしていたら、小さい泡が大きい泡にくっついて一つになるように、小さい次元は大きい次元に吸収されて消えてしまう」


リク「相変わらず話が大きすぎて理解出来ねえなぁ。しかし、もっと分かんねえのはあいつらだ……あの怪物達はなんでそんなことを狙っているんだ? 自分の住んでた場所だろ」


レヒト「あいつらは僕の次元を支配しようと自分の体を改造して、人間をたくさん殺したんだ。だから、僕達はこのベルトとスーツを作り出して、あいつらと戦ったんだ。そして残りの十体は勝てないと踏んで、別の次元のもっと大きな次元に繋げて、この僕の住む次元を吸収させて、潰そうとしたんだ」


リク「それが、俺の次元か」


レヒト「うん。でも、こちらもたくさんやられて、この変身ベルトを使えるのは僕だけになってしまったんだ。あいつらはそれに気付かなかったんだ」


リク「なるほどな。それで、お前と出会えたのか」


レヒト「うん、そうだね」


スポットライト消灯



……シュー……


 独特の音を立てつつ、登馬副部長の赤いサインペンが容赦なく文字の上を走った。


「長過ぎるよ。異次元の怪物達を退治するためにレヒトがやって来た……程度でいいよ」

「は、はい」



第二場

照明全灯


リク「初めて会った時のこと、覚えてるか?」


レヒト「忘れられないよ。君のお父さんが無事で、本当に良かった」


リク「ああ、お前が助けてくれたからな。ちょうど、ここで会ったんだよな」


暗転



 副部長さんの赤ペンが何かを書き込んだ。


「ここはもう少し、台詞を足して、動きの演出を監督に要求しよう」

「えと、はい」



第一幕 回想


照明 全体 赤

人物にスポットライト


舞台右脇。

帽子の少年、倒れた父の体にすがる。


リク「父さん! 父さん! か、怪物め! これ以上父さんを傷つけるな!」


リク、自分に近付いてくる怪物への恐怖に言葉を失う。

怪物は姿を見せず、舞台袖にいる設定で演技。


効果音 怪物の咆哮


仮面の戦士(レヒト)が舞台左より走り込む。

リクを庇う。

背中に攻撃を受けて倒れる。

リク、一緒に尻餅をつく。


レヒト「うわぁっ!」


レヒト、怪我を負いながらもリクの体を掴んで舞台中央へ引きずる。


リク「お、おい! 離してくれ! 父さんが!」


レヒト「分かってる。でも、ここにいるんだ!」


レヒト、舞台右側外へ走り抜ける。スーツを脱ぎ、レヒトの衣装に着替える。


効果音 戦闘中


リク、舞台右方向を向いて、呆気にとられた顔。


リク「な、なんだよ、あれ……怪物と、互角に戦ってる……?」


レヒト「うわぁ!」


素顔と普段着のレヒト、苦しみながらリクに近付く。小道具変身ベルトを渡す。


レヒト「頼む、そのベルトを巻いて、一緒に戦ってくれ!」


リク「俺が!?」


レヒト「ああ、そうだよ! 僕と心を一つにするんだ!」


リク、驚きながらもベルトを巻く。

リクとリヒト、肩を並べ、変身ポーズ。


リク・レヒト「変身!」


タイトルコール



 再び赤ペンが走る。


「二人で一人の戦士になるという描写があるといいかな」

「あ、す、すみません」


 忘れていた。

 参考にした作品を誰でも知っているなんてことはあり得ない。

 少し考えていれば気付くことを指摘されるのは、なんとも恥ずかしい経験だった。


 登馬景副部長。

 役者としてだけでなく、自ら監督も脚本もこなし、顔立ちも希有としか言い様がない人物だった。

 自分とは、何もかも違う。森守和月の心がこの人に独占されてしまっているのも、無理からぬ事だった。

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