第46話 ボクと誤解と水と恨み -08

    八



 ……

 ……やっぱり、そうだった。

 思い返して、確信できた。

 ボクを。

 ボクをこんな目に合わせたのは……


 ……っ!

 胸が痛い。

 ものすごく痛い。

 この痛みは、ストレスからくるものではないことは判っていた。

 そもそも普通の人は、あれぐらいじゃ倒れたりはしないだろう。

 だが、ボクは違った。

 ボクには、ある理由があった。

 その理由が、全ての原因だった。

 倒れたのも。

 ボクが英時に好きだと伝えられないのも。

 全部、これがあるからだった。

 ある理由。

 それはボクが爆弾を抱えているから。

 あぁ、そう言うと皮肉にも、爆弾というその言葉がよく似合う。

 それは、一旦は鎮火された。

 奇跡……『希跡』で鎮火された。

 だけど、いつ爆発するか判らなかった。

 おそらく、さっき導火線に火がついてしまった。

 もしかしたら、もう爆発してしまったのかもしれない。

 それがもう一回鎮火すること、つまり『希跡』が起きることは――多分、絶対に、ない。



 先天性の心臓病。

 それがボクの爆弾だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る