第17話 ボクと友達と親友と劇 -02
二
早歩きした。
訳もなく歩を速めた。
いや、訳ならあった。
二人に、会いたかった。
二人と、話したかった。
二人に、確認したくなった。
二人に――
「「あ、やっと見つけた」」
「……!」
ボクの目の前には、真美と奈美がいた。
ボクが会いたかった、二人がいた。
不意に、涙が出そうになった。
……実際は欠片すら出てはいなかったが。
「真美ぃ~奈美ぃ~」
「どうしたの?」
「大丈夫? そんな泣きそうな顔で……」
「ま、まさか!」
「……真美。そんなに大声を出して、どうしたの? キャラにあってないよ」
「そんな冷静でいる場合じゃないよ、奈美! 佑香が……佑香が二一番に……」
「何かされたって? まさか。あんなへタレヘラヘラ馬鹿に、何も出来やしないよ」
「じゃあ、佑香は何で……」
「それは……うん、聞いてみよう」
「「佑香、どうしてそんな顔なの?」」
「父親と母親の遺伝子のせいだよ」
思わずツッコミをしてしまった。彼女達はこういうようにボクをからかう方向にすぐに持っていくから、反射的に行ってしまう、必然スキルとなっていた。
……でも、やっぱりそうだった。
先の言葉からでも分かる。
真美と奈美は、ボクをこんなにも大切に思ってくれている。
それはとても……とても嬉しいことだった。
「あのね……真美……奈美……」
ボクは笑顔で、二人に訊いた。
「ボク達、友達だよね?」
「「あ、うん。親友だよね」」
二人は、あっさりとそう言ってくれた。
否定せず、更に求めている言葉をくれた。
何も言っていないのに。
心の中を読み取ったかのように。
親友である、と。
「……っ」
ボクはあまりに感動に思わず二人に飛びついた。
「ありがとう……ありがとう……」
「いや、そんな飛びつかなくても」
「そんな当たり前のことを」
「っていうか、そういう時に飛びついておきながら泣かないんだね。奈美とは大違いだよ」
「私、そんなに泣き虫じゃないよ……そういや私は、佑香が泣いたところを見たことがないなぁ」
「そうだね。非情だね」
「うん。非情だね」
そう言って二人は、すぅっと離れた。
「「さっきの発言、取り消していい?」」
「駄目だって!」
ボクは全力で阻止した。
そういえば言う通り、泣きそうになったことは多々あるが、人前で泣いた覚えがない。幼い時にはあったのだろうけど、覚えていない。
しかし、どうしてボクは泣かなくなったんだろうか。
……あ。
あの時か。
あの時から、ボクは……
「何を考え込んでるの? 佑香」
「嘘だって。そんなに悩まないで」
「……ん? あぁ、ごめん。何でもないよ。あはは」
「「そうならいいけど……」」
二人は眉をしかめながら頷いた。二人にまた心配をさせてしまったな。二人が心配してくれるのは嬉しいけれど……その姿は、もう見たくはない。
二人だけじゃない。
新しく増えた。
いや、以前からあったのが、最近前に出て来ただけだ。
彼も。
彼の心配する姿も見たくない。
そう。
だから隠し通さなきゃいけない。
あのことだけは絶対に。
「……ねぇ、真美、奈美」
「「うん? どうしたの?」」
「今から、駅前のカフェテリアの新作パフェを食べに行ってみようよ」
「いいけど……」
「太るよ?」
「嫌だなぁ奈美。何事にもチャレンジ精神が大切だよ。さ、行こ」
ボクはそう言って無理矢理二人の手を取り、いきおいよく校舎を出た。
笑顔で。
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