第15話 僕と学校と判明と親交 -07

    七



「……はぁ」

「朝から溜息つくなよ、英時」

「でもなぁ……」


 あの後に佑香を探し回ったのだが、結局見つけることは出来なかった。だから次に日の朝に、こうやって伏せているわけだ。

 佑香は来ているが、まだ謝るチャンスがない。というか、話し掛ける言葉がない。


「迷うんじゃねぇよ」

「でもなぁ……何ていったらいいか……」

「『萌えー』って言えよ」

「そうしたら解決するか?」

「まぁ、色々と解決するな」

「うん、分かった。やってみる」

「ちょっ……」


 僕は、真美、奈美と話している佑香の元へと向かった。


「ねえ、鈴原さん」

「んん?」


 佑香は、不思議そうな顔でこちらを向いた。


「何?」

「萌えー」

「……」


 佑香の顔から表情が消えた。


「……って、広人が言っていました」

「……そう」


 元に戻った。

 咄嗟にこう言ったが、どうやら回避は成功したようだ。


「ではでは……」


 僕はそう言って逃げるように、とぼとぼと自分の席へと戻った。


「おい」


 戻ると早速、広人が頬杖をつきながら非難めいた目を向けてきた。


「嘘つくなよな……あ、嘘じゃないか」

「駄目だった」

「あぁ。何も解決しなかったな」

「ところで、『萌えー』って何だ?」

「……流行語だ。いつの時代かの」

「へぇ……それで、意味は?」

「話せば長いようで短いようで長いぞ。まずはそもそもの発祥の地である美しょ……」


 と、ちょうどその時、始業のベルが鳴った。


「おっと……話は後でな」

「あぁ……」


 それにしても『発祥の地である美しょ』って何だろうか……と、そんなことを考えている内に佑香も席に戻ってきたが、特別に会話をすることはなかった。


「……」


 何だか言いようのない気持ちになった。

 よく分からない気持ちのままで、ホームルームが始まってしまった。


 そして――


「……ちょっと、待て」


 後にそのホームルームでの出来事に、僕はひどく後悔をすることとなる。

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