第7話 ボクと出会いと学校と友達 -05

    五



 その日の昼休み。


「……ってなわけなんだよ」


 ボクは二人に、これまでのことを話した。

 電車でのこと。それで怪我をしたから、英時が迎えに来たことを。だから、仲良くとかそんなんではないということを。

 二人は「ふぅん」と頷くと、


「要するに佑香は遠山君と」

「朝帰りということか」

「……どこかどうなったらそうなるの?」


 ボクは溜息をついた。まぁ、こんな風にからかわれるのは日常茶飯事ではある。


「もし彼と朝帰りしたら、うちのお母さんがそれはもう大喜びで二人に伝えてくるでしょうが。……不本意だけど」

「うん、そうだね」

「確かにそうだね」

「だから判ったでしょ? ボクの潔白だと」

「「うーん」」


 二人は納得していない様子で唸る。


「とりあえず遠山君が佑香に手を付けたってことねー」

「そういうことねー」

「……何を言っても無駄みたいね」


 ボクは、ふぅと椅子にもたれかかった。


「……ったく、もう。からかうのもいい加減にしてね。誤解されたら困るじゃない。遠山君が」

「ごめんねー」

「許してー」

「気持ちこもってないー」

「「だって気持ちこめてないもん」」

「あんた達ねぇ……」


 二人を正面からがっつり睨もうと思い、勢いよく身体を起こそうとしたのが、


「うわっ!」


 そのまま後ろに椅子ごとひっくり返ってしまった。

 全然痛くはなかったが、驚いた。


「大丈夫?」

「生きてる?」

「うーん……なんとか……」


 そう答えながら後ろを見た時、思わず顔が引きつってしまった。


「あーあ……やっちゃった……」


 ボクの後ろの机が、見事に中身を散乱させて倒れていた。


「あーあ、片付けなくちゃ……」

「がんーばれー」

「まけーるなー」

「ちかーらのかーぎりー……って、手伝ってくれないの?」


 こっくりと二人は頷いた。


「人間、優しくしちゃ」

「いけない時があると思うのよ」

「だから私達は心を鬼にして」

「見捨てようと思う」

「……いつも鬼のくせに……」


 ちょっと涙ぐみながら、散らばった中身を一人で片付けようと手に取った。

 その時だった。


「……え?」


 ボクは手の中の、を凝視した。

 それは、つい最近に見覚えのあるもの。

 そしてそれは――とても重要なもの。


「「どうしたの?」」


 気が付くと、ボクの目の前に心配そうな表情の真美と奈美の顔があった。


「ん? 何でもないよ」

「「それならいいけど……」」


 そう言うと二人は、ボクが散らばしたものを拾い始めた。


「あ、ありがとう」

「「いいってことよ」」


 それから二人は黙々と手伝ってくれた。何だかんだ言って、この二人は優しいのだ。

 それはそれとして……うん。

 あれは訊かなくちゃ、だよね。


 ボクは散らばらした物を拾いながら、あることを決意していた。

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