121 『白蛇』
「うーむ、裏切り推奨の協力ダンジョンって感じなだなぁ」
最初の試練から一時間ほど経ち、第二、第三、第四の試練を突破した感想である。
第二の試練は一人なら渡れるが二人だと落ちそうな上、一度しか渡れない橋の通過。
第三の試練はどちらかが殴られることで開くという酷い扉。
そして先ほどクリアしたばかりの第四の試練は、お互いがお互いに対して不満に思うことがひたすら勝手に口からでるという、嫌がらせのような通路だ。
「ふん、先祖はそれだけ人間を信用していなかった、ということだろう。人間の使用人も多く使えている白蛇のものにとって、それを見極め使うことも重要なことだからな」
「んー、そんなもんなのかねぇ」
その割には、途中で相手を見捨てて離脱するルートが毎回設置されてたりして、どうにも違うように感じるのだけれど。なんというか、お互いの信頼を試すような?
「いやまぁ、ハナから信頼ゼロなんで関係ないんだけどさ」
イラつくが、そこで裏切るのはどうにも収まりが悪いし、一度付き合うと決めた以上は、しっかりやり遂げない気がすまない。
「おい、なにをやっているんだ、置いていくぞ!」
「あー、お前が早すぎるんだよ、もっと余裕を持ってゆっくり行こうぜ。わざわざ急ぐようなことでもないんだからさ」
先を行く白蛇に軽く走って追いつく。なんというか、余裕がなさすぎる。別に、これまでの試練も嫌がらせのようなものばかりで、難しかったり危険といったようなものはほとんどなかった。わざわざそこまで気負いすぎる必要もないと思うのだけど。
「よし、ここが第五の試練の場所だな」
「さて、どんなのがくるのかね」
もはや見慣れてきた小部屋のような空間、そこに記された試練の内容は単純明快。
『この先に進み、白蛇の鱗を手に入れよ。さすれば、汝らを認めよう』
どうやらこの書きかた的に、この試練が最終らしい。
先へ進み、『白蛇の鱗』とやらを入手すればいいらしいが、どうやって撮ればいいかの説明なんて何もない。それも含めて探し出せってことなんだろうか。
「ほら、行くぞ! 何、今までだって大した内容じゃなかっただろう、さっさと鱗を手に入れて試練を突破するぞ!」
「あっ、待てよ……!」
気負いすぎ、とは思ったが逆にここまで無警戒にいっていいわけがない。何を急いているのか、俺を残して一人先走って白蛇は行ってしまった。
「というか、思いっきりフラグ立ててやがるし……!」
流石に最終関門がこれまでと同じと思っていいはずは無い。なにより、あんなフラグ全開なセリフを残していって、何も起こらないわけがない、と直感で感じる。
「うっ、うわぁああああぁあ!?」
先で悲鳴が上がる。もはや考えるまでもなく白蛇のものに決まっている。
「だから言わんこっちゃない……!」
そして、白蛇に遅れて通路の先にたどり着いた俺を待ち受けていたのは、文字通り『白蛇』だった。
「白蛇の鱗って、アレからとれってことかよ……」
直径が一メートルは優に超えるであろう太さ、そしてそれに見合う長さを持った、巨大な白い蛇。そしてそんな大蛇に絡め取られ、身動きできない様子の先走って進んだ白蛇。
「なんという無理ゲー」
いきなり難易度跳ね上がりすぎじゃないでしょうか……?
どう考えても適いそうにない大蛇に、人質(?)の白蛇。一体どうすればいいんだろうか?
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