番外編 星夕ドーナッツ 四
夕涼みでの語らいにふさわしい、さらりとした飲み口の煎茶と、ぽってりとしたガラスの小鉢が運ばれてきた。
ガラス小鉢は、冷し抹茶白玉ぜんざいのようだが、甘味には見慣れないキューブ型のバニラアイスのようなものが入っていた。
「さすが井桁、今は、熱いお茶が飲みたかったの、わかってくれてる」
「まあな。美美専属みたいなもんだからな」
井桁は美美に声をかけられてうれしそうだ。
「甘味の方は、おれが作ったんじゃないけどな」
「深川さんね、甘味担当は」
美美はそう言うと、まずひと口煎茶を飲んで、ほっと息をついてから、スプーンと小鉢を手にした。
「アイスティーではなくて、すきっとした飲み口の煎茶、そして、夏の甘味の冷しぜんざい。では、いただきます」
美美はスプーんで白玉といっしょにキューブ型アイスを口に入れた。
「抹茶と
「セミフレッドです」
深川が答えた。
「セミフレッド?洋菓子?」
「イタリアのドルチェです。果物などをクリームに加えて凍らせたもののことです。これは、バナナのピュレを使ったセミフレッドです」
「すごい、洋菓子も詳しいのね、深川さんって」
抹茶と白玉とバナナのセミフレッドの冷しぜんざい。
バナナは意外に抹茶や餡との相性がいい。
フルーツクリームあんみつが美味しいことを思えば、冷しぜんざいに果物やアイスクリームをプラスしても、当然美味しいはずだ。
喫茶の夏のメニューの一品にいいかも、と思いながら、冷し抹茶白玉ぜんざいバナナセミフレッド添えを、美美は味わった。
味わい終える頃に、深川が、
「試作品で、お目汚しになりますが」
と美美に告げて、奥へと歩いていった。
どうやら、自作の和菓子を披露する気になったようだ。
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