第1章 


「誕生日おめでとう、伊織!」


「ありがと、飛鳥」



 教室に入ると、誕生日を知ってる友達が何人も声をかけてくれた。


 そのなかでも、熱烈にお祝いしてくれる、ショートカットの女の子――水色のチェック柄のバレッタがトレードマークの、一番の親友――如月飛鳥きさらぎ あすかはコンビニでケーキまで買ってくれていた。


 こんなにお祝いしてくれる人がいる。


 そう思うと、必ず今日の大事な用事を成功させようって気持ちになれた。


 だって、この用事が成功しなかったら、私は本家に戻って、二度と学校には来られないから・・・・・・。


「ほんとは放課後にちゃんとお祝いしたかったんだけどね」


「ごめん! 家で彰宏さんが待ってるからさ」


「まあ、あんなイケメンが待ってたら仕方ないね」


 目を輝かせる飛鳥は、完全に恋する乙女だ。


 恋にも、何に対しても「全力投球!」がモットーの飛鳥は、すごく輝いて見える。


 反対に、私は流されてばっかりだ。


 でも、今日だけは譲らない。


 飛鳥の前では普通にしてたけど、気づくと、私は無意識に拳を握りしめていた・・・・・・。


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