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「少尉!」
救命ラフトの中で操舵していた丸山三曹が叫んだ。
「弾頭が後方より接近してきます」
弾頭のシーカーにロックされたことを示す、パッシヴセンサーの警告音がラフトの艇内に響き出した。
越乃少尉には、小さい
「丸山三曹、両舷微速後退1/2」
「少尉、それでは、直撃のコースのままです」
丸山が、緊張した声で、振り向きざまに叫んだ。
「丸山三曹、実施せよ」
レーダーを監視していた、コ・パイロットの市田士長が叫ぶ。
「命中まで、約10秒」
市田士長のカウントダウンが続く。
「9、8、、、、」
艇内の独りの隊員が叫んだ。
「あんた、俺達を殺す気か!!、丸山やめろ!」
丸山三曹の表情が振り返ったまま、苦悶に歪む。
「かかれ、丸山三曹!」
「うわーっ」
丸山は、絶叫して、推進剤を逆噴射させた。
「命中予測時刻が早まります、2秒、1、命中します」
市田が小さな声で読み上げたそのとき、
ごん、という鈍い音が、救命ラフトの後方でした。
艇内の何人かは、スーツの気密メットを被って衝撃と気圧差による流出に備えていたが、音がしただけでなにも、おこらなかった。
天才は気密メットすらかぶっていなかった。
「統合軍では、500グラム以上の炸薬を積んだ、いかなる弾頭も、射手の保護のため、安全装置が100宙間距離に設定されている」
越乃は言った。
『へへへ、、』
ヘンダーソン准尉の無線の声が挺内に響いた。
『丸聞こえだぜ、越乃さんよ。悪いが、次は安全装置解除で撃たせてもらうわ』
「皇軍空間機動歩兵では、76式バズーカ通称"ヨイチ"の再装填時間、毎分6発、一発10秒切らないと、火力支援兵にはなれない決まりだ。統合軍は何秒だ?。上も下もない宇宙空間でできるのか、手を動かすだけで、向きや絶対宙域位置が変位するぞ、ヘンダーソン准尉?」
『試してみるか』
「人生の大部分は確立に依存している。戦闘でなく、人生そのものが、ギャンブルだ。だが、同じ、空間機動歩兵としてお互い気密スーツ一枚で戦っている
『てめーも焦ってるらしいな、天才さんよ』
「天才は、天才と呼ばれだしたら、もう過去の天才だ」
返事はなかった。
「両舷後進全速、すべての推進剤を使え」
越乃少尉は、最後の命令をくだした。
救命ラフトに振動がおこるくらいの信じられないぐらいの後退の加速がかかり、今度は、さっきより、大きな重量物がぶつかり更になにかが、破壊された鈍い音がごんと、ラフト内まで響いた。
空間機動歩兵なら誰でも、知っている音だった。人骨が硬いものにあたり骨折した音だった。
やがて、首が不自然な角度になり簡易スーツを着た動かない人間が漂っているのがラフトの窓から見えた。
艇内の第22特務中隊の全員がクルップラー繊維一枚で宇宙空間で戦う怖さ過酷さを知っている、全員がうつむき、押し黙った。
「誰も、責任を感じる必要はない。二回も警告を出した、
越乃は言った。
「市田士長、一番近い、友軍の戦闘宇宙艦はなにか?」
「駆逐艦"
「しっかり、救難信号を発信の上、進路を"
「了解」
「おれは、少し、休む」
と言って、ラフトの操舵区画から越乃が離れようとしたとき、独りの古参兵が越乃の前に立った。
越乃の目が鋭くなった。
「自分は、
小椋は越乃の父親だといっても通りそうなぐらいの歳だ。
「なにか、特務曹長?」
「少尉が通信で取り上げられていた戸川とは、10年来の戦友であります、いや、ありました」
「そうか、戦死者への冒涜と侮辱と受けとったなら、正式に謝罪する」
「いえ、自分も、降下中、後5秒待てなければ、スラスターを全開にしていました」
「俺は、戸川軍曹より先にスラスターを全開にしてたよ、しかも、
小椋は、一瞬声をつまらせた。
「まだ、あるのかな曹長?」
「自分を少尉の部下にしてください。一緒に戦わせてください」
越乃の目が柔らかくなった。
「今回のミッション、どの程度、偶然と幸運に守られていたか、わからんぞ、曹長」
「いえ、自分にはわかります」
「残念だが、おれにはこの部隊に対する人事権が一切ない。将校とは言え曹長から一つ階級が上なだけの下っ端にそんなこと願い出るな。それと、おれが尋常小学校のころから軍歴がありそうじゃないか、使い
そう言うと、寝台のあるコンパートメントに越乃は体を流していた。
「その歳でも幹部候補生を受けてみないか?将校クラブへようこそだ。裁量も多くなりやりがいがある、待遇も良くなるぞ。まぁ、お互い、こんな特殊作戦に選ばれている身だ、特殊部隊など狭い社会、いずれ何処かで会うだろう、一緒に戦うことになるよ、じゃあな」
そう言うと、天才は、身を翻し、適当に寝台を見つけ、横になった。
了。
天才士官、宇宙を謀る 美作為朝 @qww
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