第89話 真実5

「瑞穂が殺されてからは……元々進めていたプロジェクトに、このダウト計画を密かに織り混ぜて、私はプロジェクトの指揮を取りました」


次々に明かされる真相をみんな静かに聞いている。


「実質、次期社長となる私の指示を誰一人疑わず、この計画の手となり、足となり動いてくれました。それが、壮大な殺人計画の手助けになっているとも知らずにね」


そうだったんだ……。元々、このテーマパークを作る会社の人間なら、この施設ごと自由に使うことも可能だよね……。


「……まだ分からないことがある」


先程の臨戦体制から、やや落ち着きを取り戻した陸人が口を開いた。


「自分がゲームを敗退するまで、俺達は他のやつらが惨殺される映像を確かに見てきた。なのに、今ここにいるメンバーの中に、死んだ人間も、重傷を負った人間も、誰一人いない。……何でだよ?」


それは、私自身、みんなとここで再会してから、ずっと疑問だった。


「そうですね。その点も、貴方達には納得いかない点でしょう。なぜ惨殺されたはずのみなさんが無事なのか?3つ目の謎解きをしましょうか」


その謎の真相に、みんなが固唾を飲む。


「参加者の貴方達が無事な理由。それは、簡単なことですよ。あの惨殺映像は、事前に既に録っていた映像だからです」


「……えっ?」


「事前にって……あの映像は、最初から用意されていたってこと?」


「そ、そんな……」


ざわつきの中、九条さんが凛とした声で異議を唱えた。


「待ちなさいよ。それは、おかしいんじゃない?自分が計画したのだから、集められた人間が誰なのかは分かっていても、各ゲームで、誰が負けるかなんて、やってみなければ分からないじゃない?事前に、その敗者の人間の惨殺映像を作っておくなんて、不可能でしょ?」


確かに、そうだよね。


けれど、執行人は口元に微かに笑みを浮かべながら言う。


「確かに、勝負の結果は、実際に行ってみなければ、私も分かりませんでした。でも、敗者の惨殺映像を予め作ることは可能なんですよ」


「えっと、意味が分かんない……どういうこと?」


九条さんの隣にいる宮野さんが不思議そうに首を傾げながら聞くと、執行人は、意外な言葉を口にした。


「みなさんがモニターで見た映像は、ゲーム敗退者の映像でしたか?」


……え?一体どういうこと?


「みなさんが、各ゲームの敗者が殺されたと思っていた映像は、実はどれも、個人が特定出来るが全く映っていない物ばかりだったんです」


「……!!」


誰もが驚きに目を見開いた。


顔が、映ってなかった……?


「敗者が、執行人の私が仕掛ける罰に恐怖するところまでは、リアルタイムに流した映像。しかし、その後、流れた惨殺映像は……私が事前に用意してあったのみを撮った映像だったんですよ」


「まさか、そんなこと……!」


九条さんが驚きに青ざめながら、呟く。


「個人の顔がはっきり映ったリアルタイムの映像の後に続けて、局部的な負傷映像を流すことによって、みなさんの脳は、こう判断した。『この惨殺映像は、ゲーム敗者となった人間』の物だと」


……何てことだろう。


私達は、みんな、この執行人が巧妙に仕組んだダウトに踊らされていただけだったんだ……。

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