第59話 憎しみの連鎖
「相手を勝たせるためのダウトですか。実に美しい。感動いたしました。ですが……」
すると、執行人はいきなり脚を振り上げ、ゴツゴツした黒のブーツで、陸斗の腕を踏みにじった。
「貴方のような人間は必要ありません。なぜなら、このゲームは」
そこまで言った時、執行人は隠し持っていた銀色の大鎌を陸斗の前に突きつける。
「罪人探しのゲームなのですから」
そして、執行人は大鎌を大きく振り上げると、一気に陸斗の手を目掛けて降り下ろした。
「うわああああ……っ!!」
「陸斗!!」
その瞬間、私は円の中の仕掛けも忘れて、外に飛び出そうとした。
でも……。
「きゃあああ……!!」
足先から身体中に雷のような電流が走り抜け、その場に崩れてしまう。
「あぁ……うっ……」
痺れる脚を押さえながら、私は再びモニターを見上げた。
「……!!」
そして、絶望的なものを見てしまう。
それは……撒き散らされた鮮血の中に転がる手首から切断された二本の手……。
「陸斗……っ」
一気に涙が溢れてきて視界が歪んだ。
「自分の命惜しさに、粉屋は自分の娘の手を切り落とした。そう……人間は、己を守るためなら、身近な人間をも犠牲にする。この世で最も怖いのは、獰猛な動物でも、化け物でもない。人間です」
耳に突き刺さる冷たい声。
「2回戦を勝ち抜いた皆様。おめでとうございます。貴殿方には、最終ゲームへの参加の権利を与えます。最高のダウトで、最後のフェアリーテイルを完成させてください」
……。
……何が、最高のダウトよ。
人の秘密暴いて、まるでゴミみたいに、人を傷つけて……。
「……けないで」
悲しみと絶望の中に、じわじわと怒りが沸き上がっていく。
「……ふざけないで!!」
一人きりの広い広間に、私の叫び声が響いた。
「許さないから……」
涙で歪んだ視界の中、非情な執行人を睨む。
「アンタを絶対許さないから……!!」
「……」
目は隠れて見えないけれど、執行人は無言でこちらを見つめているように感じた。
「……憎いですか、私が?」
少しの静寂を破って、その人物は聞いてくる。
「憎いよ……!!絶対に許さない……!!」
初めての感情に、身体中が熱くなっていた。
すると、意外な言葉が返ってくる。
「解るよ。その感情……」
……?
今まで冷徹で無感情だった執行人の声に、感情が混ざっていた。
(あれ……?)
この言い方……。
どこかで聞いたことがある……?
『解るよ。その気持ち……』
誰、だっけ…………?
「今から、電流装置を解除します。私が手を上げたら、そのヘキサグラムの中から出て頂いて大丈夫です」
疑問の過る私の耳に、執行人の声が響く。その声音は、今まで聞いてきた通りの冷たい声に戻っていた。
「……」
疑問は解けないまま、そっと足を動かしたけど、電流はもう流れない。
「♪♪♪♪♪♪♪♪」
不意にスマホの着信音が鳴り響き、思わず体がビクッと震えた。
「最終のアトラクションの場所をメールで送りましたので確認してください」
スマホの画面を確認すると、新たな新着メールが来ている。ゆっくりと添付のデータを見ると、アトラクション名と、その位置が示されていた。
青髭……?
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