第50話 破れた恋心

「ダウトしろ、美羽」


向かい側の円の中に立つ陸斗が真顔で、私に迫ってくる。その気迫に、私の心は混乱した。


(何でよ!?何で、そんな風に言うの!?)


ダウトゲーム1回戦の時、陸斗は宮野さんに勝つことをものすごく躊躇っていた。


それなのに……。何で、私とのゲームには一切の迷いがないの……?


ちょっとお調子者だったけど、でも、明るくて優しくて、さりげなく私を助けてくれて。大切な友達だって、思ってた……。


それなのに。


そんな陸斗は、全部嘘だったの?それとも、このゲームの罰が怖くて、何がなんでも私に勝ちたくなったの?


1回戦のゲームで、勝つために演技で矢部君を欺いた九条さん。


同じく勝つために、嘘のダウトで私を負かそうとした田部君。


2回戦のゲームで、冷静に九条さんを切り捨てた黒崎さん。


みんな、このゲームで狂っていった。


だけど、陸斗だけは違うって。


そう思ってたのに。


「何してんだ!早く……!」


「陸斗ってさ……何考えてるか分かんないよね。前からさ」


「美羽……?」


「優しそうで、だけどほんとは、人の気持ちなんか全然分かってない」


「……」


ダウトを迫っていた陸斗が黙りこむ。


「あの時だって」


「あの時?」


「中三の夏……」


私と智子のいるクラスに、陸斗がしょっちゅう来るから、クラスの男子に陸斗は聞かれた。


『村上。お前、このクラス毎日来るよな?』


『何だよ。来ちゃダメかよ?』


『お前さ、コイツら二人のうちのどっちか好きなんだろ?』


『……っ』


『どっちだよ?言えよ!』


その男子の言葉を引き金に、クラス中が、告白しろコールで盛り上がった。それは、陸斗が告白するまで止みそうになかった。


『俺は……』


陸斗が口を開くと、コールが止む。


『俺が好きなのは……』


陸斗が選んだのは…….。



「……智子」


なぜか、ズキッと胸に痛みが走った。


私は、どこかで思ってたんだ。


陸斗が選ぶのは……私だと。


「んだよ、智子の方かよ~」


「絶対、笹原だと思ってたのに!」


「ほらね、私の言った通りじゃん。私は、智子って思ってたし」


「意外~。私も美羽って思ってたのに」


どうやら、陸斗が、私と智子のどっちに告白するかで、クラス中で予想をしてたみたいだった。


「おい、村上。感謝しろよ?オレらのおかげで、コクるきっかけ作ってやったんだからさ」


クラスの男子が、陸斗の肩に腕を回しながら言う。陸斗は照れ臭いのか、黙っていた。


ふと、智子の方を見ると、智子も私を見つめてくる。


そして、笑った。


その顔には、嬉しさと、勝ち誇った自信が滲んでいた……。

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