第46話 同時
「アンタ、バカじゃない………!?ほんとに罰を受けるわよ!?」
焦りが最高潮に達した様子の九条さんが、甲高い声を上げる。
「俺に構わず、ダウトを」
相変わらず黒崎さんは冷淡な態度で言い放った。二人はお互いを見据えたまま、時間だけが過ぎていく。
そして、タイマーが「00:15」になった時。二人が同時に「ダウト」と叫び、互いの秘密を言った。二人がダウトしたから、タイマーが「00:03」で止まる。
すると、一番上のモニターに映るローブの執行人が言った。
「ダウトが重なりましたね。では、今から一人ずつダウトの内容を言ってもらいます。ちなみに、さっきのダウトと異なる内容を言えば、バレます。このダウトゲームの模様は、全て録画されていますので」
……全部記録に残ってるの?この狂ったゲームが。
だけど、そんな記録残したら、自分の犯行を証明するようなものじゃない?自分がやってることを隠そうともしないのね……。
普通じゃない。
本当に狂ってる……。
「では、九条さん。貴女から先に、どうぞ」
ローブの執行人の声に、九条さんが複雑な表情を浮かべながら告白した。
「私のダウトは……女性しか愛せないこと」
……え?女性しかって……つまり同性愛ってこと!?
じゃあ、さっきの1回戦で言ってた、付き合ってる予備校講師って……女性ってこと……!?
ふと向こう側にいる陸斗を見ると、特に驚いた様子もなく、冷静な表情を浮かべている。
「なるほど、分かりました。では、次に黒崎君、どうぞ」
陸斗同様、全く驚くこともなく淡々とローブの執行人が指示した。黒崎さんが、その言葉に薄い唇を開く。
「俺のダウトは……」
続く言葉に、九条さんのダウト以上の衝撃を受けた。
「榊原高校2年3組の篠沢を不登校にさせた」
……え?
2年3組の篠沢君って……。彼が2年の途中で不登校になり、現在も休学中なのは校内では有名だ。本来なら、黒崎さんや九条さんと同じ3年に在籍してるはずだけど、2年の途中から不登校なので進級出来ていない。噂だと、精神を患い、精神科か何かにずっと通院中だと聞いた。
……彼が、その原因だと言うの?
それが、ある日突然、体調不良を理由に学校に来なくなる。友達はいないようだったけど、かといってイジメにあっていることもなく、なぜ突然不登校になったのか謎になっていた。
「……どういうこと?」
九条さんが不可解だという表情で、黒崎さんに聞く。黒崎さんは、何かを思い出したのか、冷静さの中に嫌悪を混ぜながら答えた。
「篠沢は、ある女子生徒にストーカー行為をしていた。だから、その事を学校と警察にバラすと脅した。そうしたら学校に来なくなった。それだけのことだ」
「ストーカーですって?あの篠沢が?信じられない……」
九条さんが驚いたように溢す。
「誰をストーカーしてたのよ?」
「それは言えない。なぜなら……」
黒崎さんが冷たい視線で、九条さんを見つめながら言った。
「次のダウトに関わるからだ」
「……っ」
九条さんの顔に戦慄が走る。
次のダウトに関わる……。
「では勝敗を決めましょう」
無感情の声が響き渡る。
そして、モニターに表示されたのは。
『Winner 黒崎 秀一
Loser 九条 綾音 』
「そ、そんな……!?」
九条さんが悲鳴に近い声を上げる。
「そんな!!嘘よ、嘘よ!!私が負けなんて……!?」
普段の彼女では考えられないくらい、完全に取り乱していた。
「誰にも知られたくない秘密を告白したのに、それでも負けるなんて……!!」
長く艶やかな髪を振り乱して反論する九条さんを黒崎さんの瞳が冷たく見つめている。
「ま、待って……!!他のダウトを……!!」
九条さんの必死の懇願も叶わず、刃のように冷酷な宣告が下された。
「敗者には、罰を」
次の瞬間。
ヘキサグラムの円から出ようとする九条さんより、ほんのわずかに早く、床が開いて、彼女は奈落の底に落ちていった……。
今までのゲームと同じく、黒崎さんと九条さんのゲームの模様が中継されていた画面は、真っ暗になる。これから罰を受けるのは自分自身じゃないのに、この真っ暗な画面を見るだけで恐怖が湧いた。
(次は、陸斗と……)
どちらかが、この地獄の底に堕ちなければならない……。
陸斗は、なぜか私の方を無言でじっと見つめている。今まで見たことのない真剣な顔つきで。
この時、愚かな私は気づいていなかった。
陸斗が、心に何を秘めているのかを。
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