第41話 最悪のペア

◆2回戦Aグループ


 黒崎秀一 vs九条綾音

 

 アトラクション名『ヘンゼルとグレーテル』


◆2回戦Bグループ


 笹原美羽vs村上陸斗


 アトラクション名『手なし娘』



(陸斗と……!!)


一番、この中で当たりたくなかった……。


あの凄惨な罰を賭けて、陸斗とゲームするの……?……嫌だ。あんな罰なんて受けたくないけど、陸斗にも、あんな罰受けて欲しくない。


だけど、どちらかを選ばなきゃいけないの?

何て残酷な選択なの……。


真っ黒な悲しみに、握りしめた両手が震えた。


「今から、貴殿方の電流装置を解除します。私が手を上げたら、そのヘキサグラムの中から出て、各自指定されたアトラクションへ移動してください」


ローブの執行人は、そう言った後、少しの間を置いて片手を上げる。恐る恐るヘキサグラムの円の外へ足を踏み出してみると、何も起こる気配はなかった。


電流の恐怖からは解放されたけど、これから起こるだろう惨劇を思うと、足も心も重い。


1回戦を勝ち残った陸斗も、きっと私と同じように、対戦表を見たに違いない。


ラプンツェルのアトラクションを出ると、それぞれ別のアトラクションから、黒崎秀一、九条綾音が出てくる姿が見えた。


一瞬、二人と顔を見合わせたけど、この後のゲームを考えると、掛ける言葉も見当たらず、すっと視線を逸らす。


だけど、逸らした先に、白雪姫のアトラクションから出てくる陸斗と目が合ってしまった。陸斗も、私と同じように複雑な表情に顔を歪ませている。


(陸斗……)


声に出すことも出来ず、無言で陸斗を見つめたけど、彼の方が先に、私から視線を逸らした。


逃れられないゲームに向かって、重い足を引きずるように次のアトラクションへと向かう。同じ方向へと進む陸斗の後を間隔を空けて、歩いていった。前を行く陸斗は無言で、背を向けたまま、ただ進んでいく。


(あんな招待メール、何で受けたの!?)


今さら言っても仕方ない後悔を心の中で、何度も何度も叫んだ。お母さんは、おかしいって言ってたのに。


ふと、さっき終えたゲームを振り返る。ずっと忘れてた……いや、忘れようとしてた、お母さんにしてしまった、ひどい仕打ちを思い出す。


(あんなことしたから……)


だから、今こんな罰を受けてるの?


後悔と悲しみに胸が張り裂けそうになりながら進んでいくと、「手なし娘」のアトラクションが見えてきた。


手なし娘……。そんな童話あった?読んだ記憶が全くない。どんな話か知らないけど、タイトルからして不気味だ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る