第30話 ラプンツェル

あるところに、とても仲のいい夫婦がいました。長年子供に恵まれませんでしたが、やっと子供を授かり大層喜びました。


夫婦の家の裏には、妖精の庭があります。妖精は、とても醜い姿でしたが、庭はとても綺麗でした。


ある日のこと。妻は、その庭の畑にあるラプンツェルがとても食べたくなります。そこで夫は、その畑からラプンツェルを盗んでしまいました。妻がそれを食べると、もっと欲しがったので、夫がもう一度盗みに行ったところ、妖精に見つかってしまいます。


「犯人は、お前か!」


妖精の醜い姿を見て、夫は怖くなりました。


「妊娠した妻が、どうしても欲しがったので、食べさせてやりたくて」


「そうかい。なら好きなだけ食べさせてやるよ。その代わり子供が産まれたら、私に寄こすんだ」


すっかり怯えていた夫は、その要求に頷いてしまいました。


やがて妻が女の子を産むと、妖精がやって来て「ラプンツェル」と名付け連れ去っていきました。


ラプンツェルが12歳になると、妖精は高い塔のてっぺんに閉じ込めます。その塔には階段がなく、窓が1つあるだけ。妖精は、いつも塔の下に立ち、


「ラプンツェル。お前の髪を垂らしておくれ」


そう言うと、ラプンツェルは金色の長い髪を垂らすので、それを伝って妖精は塔を上っていました。


ある日、王子が塔の側を通りかかり、ラプンツェルを見て一目惚れしてしまいます。


しかし塔への入り口はありません。諦めきれない王子は毎日通い、ある時、妖精が塔へ上るのを見ました。


次の日の夜、王子は塔の下へ行くと、こう言いました。


「ラプンツェル。お前の髪を垂らしておくれ」


すると、長い金の髪が下りてきたので、それで塔の上へと上りました。ラプンツェルは、初めて見る男に驚きます。男は言いました。


「僕の妻になってくれないか?」


ラプンツェルは頷きます。


それから、ラプンツェルと王子は夜毎、塔の中で愛し合うようになりました。


しかし、ある時ラプンツェルが


「服を着る時に、お腹のあたりがきついわ。どうしてかしら?」


と言ったため、妖精はラプンツェルが妊娠したことに気づきます。激怒した妖精は、ラプンツェルの長い髪を切り落とすと、荒野に捨て去りました。


そんなことは知らずに、いつものように訪れた王子は塔を上ります。そこで待っていたのは、美しいラプンツェルではなく、醜い妖精の姿。驚く王子に妖精は言います。


「あの子は猫が拐って行ったよ!今度はお前の目玉を掻きむしるかもしれないね!もう二度と、あの子には会えないよ!」


それを聞いた王子は、絶望のあまり……。

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