第28話 激しい憎悪
「では白雪姫のフェアリーテイルをおさらいしましょうか?」
……あれ?
ローブの人物の声が、なぜか宮野さんの映っている画面から聞こえてくる。
「あるところに、白雪姫という王女がいた。彼女の実母である王妃は、自分が世界で一番美しいと信じていた。ところが、白雪姫が7歳になったある日、いつものように王妃が魔法の鏡に「世界で一番美しいのは誰?」と聞くと、「白雪姫」だという答えが返ってきた。王妃は怒りのあまり、猟師に白雪姫を森で殺し、肝臓をとってくるように命じる」
えっ……肝臓を!?き、気持ち悪い……。それに冒頭で「実母」って言ってた?白雪姫の継母じゃないの?だって、それじゃ……本当の娘を殺そうとしたことになるよね……?
「白雪姫を不憫に思った猟師は、彼女を殺すことができず森の中に置き去りにし、イノシシの肝臓をかわりに持ち帰った。そして、王妃はその肝臓を塩茹にして食べた」
えぇっ……!?自分の子供の肝臓だって信じている物を……!?作り話でも、気持ち悪すぎて吐き気がしそう……。
「一方白雪姫は、森の中で7人の小人たちと出会い、一緒に暮らすようになる。しかし、王妃が魔法の鏡に「世界で一番美しいのは?」と聞いたところ、「白雪姫」と答えたため、まだ生きている事が分かってしまう」
ここら辺は知ってるストーリーと同じだ。それで、毒の入った林檎を食べさせて……。
「そこで王妃は物売りに化け、小人たちの小屋に行き、腰紐を白雪姫に売るフリをして、腰紐で絞め殺すが、帰ってきた小人たちによって、白雪姫は助かる。そして再び魔法の鏡によって白雪姫が生きている事を知った王妃は、今度は毒つきの櫛を作り白雪姫の頭に櫛を突き刺して殺した」
えっ……腰紐と櫛?そんなの聞いたことない……。というか、そんなに何度も何度も殺そうとするなんて……。実の娘が美しかった、ただそれだけで……。
「そこへ帰ってきた小人たちが白雪姫を生き返らせるが、また魔法の鏡により、白雪姫が生きている事が分かってしまう。王妃は今度は毒林檎を作り、そして白雪姫を殺した」
冷たい声がそこまで聞こえた時、その謎の人物が宮野由奈のいる画面に一緒に映った。
「……!」
思ってたよりも長身のローブの人物は、ゆっくりと玉座に眠る宮野さんに近づいていく。
「白雪姫の死体はガラスの棺に入れられたが、通りかかった王子が、その死体を気に入って持ち帰る途中で、棺が傾いた。それによって白雪姫の口から毒林檎の欠片が出てきて、彼女は生き返る」
そこまで話すと、宮野由奈のすぐ側まで来たローブの人物が、眠っている彼女の顎を指先ですくった。
「そして、生き返った白雪姫と王子は結婚することになった。王妃の元にも招待状が届き、彼女は二人の披露宴に赴くことになる。そこで、美しく着飾った花嫁が白雪姫であることを知り、王妃は恐怖に立ちすくんでいた。まだこの娘は生きていたのかと。そして……」
そこまで話がいきついたところで、宮野さんの瞼が小さく瞬きする。
「ん……っ」
彼女の瞳がゆっくりと開く。
「お目覚めですか、お姫様?」
「ひっ……!」
自分の顔を覗きこむ紫のローブの人物に、宮野さんが驚いて声をあげた。
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