第24話 二度目の罰

「あああああああああああ……!!」


辺りを切り裂くような悲鳴をあげた矢部君の姿は、ものの数秒で灰色の狼犬ウルフドッグ達の群れに覆われて見えなくなった。


「ガルルルッ……!!」


激しい唸り声を上げながら、獣達は矢部君の体中に噛みついているようだ。


「矢部……先輩……っ」


向かいに立つ田部君の口から、掠れた声が漏れる。歪んだ両目には、絶望が滲んでいた。


しばらくの間、耳を塞ぎたくなるような矢部君の悲鳴が聞こえていたけれど、そのうち静かになる。モニターが、矢部君から離れていく獣達を映し出す。


「うっ……!」


私は片手で口元を覆うと、モニターから視線を外した。画面に映し出されたのは、もはや誰か判別出来ないほど、全身ボロボロになり、床に大量の血を流して横たわっている矢部君の体。


「そ……んな……っ!」


田部君は呟くように言うと、頭を両手で抱えながら、その場に崩れる。顔は見えないけど、細く震えるような嗚咽が聞こえてきた。田部君は、矢部君と親友だったみたいだから、ショックも余計に大きいに違いない……。


「また一つ美しいフェアリーテイルが完成しましたね。素晴らしい。それでは、次のゲームに移りましょうか」


私達の絶望にも悲しみにも、一切関心のないような冷たい声が響き渡った。


今、4個の横並びに並んだモニターは、左から2個が電源が切られているのか真っ暗になっている。終了したゲームのモニターは、順々に何も映らなくなっていくらしい。


だから、負けた瑞貴と矢部君、そして勝った黒崎さん、九条さん達も、現在どういう状況なのか全く分からない……。


(みんな無事なの……?)


一瞬そう思った後には、これから自分自身が、あの残酷なゲームに参加しなければいけない現実で頭が一杯になり、すでに心が引き裂かれそうになる。


負ければ残酷な罰が……。


「では、1回戦Cチーム村上 陸斗・宮野 由奈ペアのゲームを行いましょうか」


緊張した顔で立つ陸斗と、相変わらずしゃがみこんだままの宮野さんの姿がモニターに映っている。


冷たい刃のような声が、広場に響いた。


「ダウト・スタート」


 

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