第20話 赤ずきん
昔、ある村に可愛い女の子がおりました。おばあさんはこの子のために赤い頭巾を作ってやりましたが、これがとてもよく似合ったので、女の子は赤ずきんと呼ばれておりました。
ある日、おかあさんはガレット(焼き菓子)を焼いてから、赤ずきんに言いました。
「おばあちゃんが病気なの。ガレットとバターの壼をもってお行きなさい」
赤ずきんは、隣村のおばあさんのところに、お見舞いに出掛けて行きました。
森を通りぬけようとしたとき、赤ずきんは狼に出会ってしまいました。
狼は赤ずきんをとても食べたくなりました。
狼は、どこに行くのかと赤ずきんに尋ねると、こう答えてしまったのです。
「おばあちゃんのお見舞いに行くのよ」
「なるほど、それじゃ、わしもおばあさんのお見舞いに行くとしよう。わしはこっちの道を行くから、あんたはあっちの道をお行き。それで、どっちが先に着くか競争しよう」
と、狼は言いました。
狼は近道を走って行きましたが、赤ずきんは遠回りの道を、蝶々を追いかけたり、花を摘んだりして遊びながら行きました。
その間に、狼はおばあさんの家に着きました。
「どなたかね?」
「赤ずきんよ」と、作り声で狼が言いました。
「母さんのお使いできたの」
おばあさんの言った方法でドアを開けると、すぐさま狼はおばあさんに飛びかかり、あっと言う間に食べてしまいました。
そして、狼はおばあさんのベッドに横になって、赤ずきんを待ちました。
しばらくして、赤ずきんがやってきて戸を叩きました。
「どなたかね?」
狼のしわがれ声を聞いた赤ずきんは一瞬ビックリしましたが、おばあさんはきっと風邪をひいたのだと思い、こう答えました。
「赤ずきんよ。母さんのお使いでガレットとバターの壼を持ってきたの」
狼は優しい声でベッドの中から、おばあさんに聞いたドアの開け方を言いました。赤ずきんがその通りにすると、ドアが開きました。
赤ずきんが入ってくるのを見ると、狼は毛布の下に隠れたまま言いました。
「ガレットとバターの壼は、そこの櫃ひつの上に置いておくれ。それから、こっちに来ておばあちゃんと寝なさい」
赤ずきんは服を脱いで布団の中に入ろうとしましたが、おばあさんの様子が変なものですから、とてもびっくりしました。それで言いました。
「おばあちゃん、なぜ大きな腕をしてるの?」
「それは、お前を強く抱きしめられるようにさ」
「なぜ大きな足をしてるの?」
「それは、速く走れるようにさ」
「なぜ大きな耳をしてるの?」
「それは、しっかり聞こえるようにさ」
「なぜ大きな目をしてるの?」
「それは、よく見えるようにさ」
「なぜ大きな口をしてるの?」
「それは、お前を食べるためさ!」
そう言うと、狼は赤ずきんに飛びかかり、すっかり食べてしまいました……。
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