第19話 不可避
彼女は両手を頭に当て、首を激しく横に振りながら叫んだ。モニターを通して、悲痛な声が、耳の奥まで刺さるように響く。
「無理ぃ……由奈帰るぅ……!!」
そう言うと、宮野さんは六芒星の描かれた円から出ようとする。
その瞬間……。
「きゃ……っ!!」
バチバチッという音と共に、彼女が円の中で腰をついて倒れこんだ。
「な、何、今の……?」
何が起こったのか分からず、私が呟いた後、ローブの人物がたしなめるように言った。
「困りますね。勝手にゲームを抜けられては。勝つか負けるまでゲームに参加して頂かねば」
理不尽な台詞の後、紫のローブの人物はまたも、信じがたい恐ろしいことを告げる。
「皆さんの立っているその円からは、この一回戦のゲームが全て終わるまで出ることは出来ません。もし無理に出ようとすれば、今のように電流を流します」
えっ……!さっきのは電流なの!?そんなことが……信じられない!!本当に、これは現実なの!?長い夢を見てるんじゃないの……!?
あり得ないことの連続で、宮野さん同様、私の心まで崩壊しそうになる。
「……っ」
さっきから指先も脚も震えていた。今までも、怖いという感情は感じたことはあるけど……。そんなものとは比べ物にならない、真っ黒な闇に突き落とされるような恐怖……。
何が何でも、私達に、この狂ったゲームをさせるつもりなのね……。一体、何の目的があって、こんなことを……?
目的の見えない、その異様な執着心に、背筋が凍りつく。
「さあ、時間には限りがあります。そろそろ1回戦Bチームのゲームを開始したい」
モニターに映る宮野さんは腰が抜けてしまったのか、電流で足が痺れてしまったのか、その場にしゃがみこんだままだ。
「それでは、1回戦Bチーム矢部真 ・九条綾音ペアのゲームを開始しましょうか」
残酷なフェアリーテイルが、また始まろうとしている。
お母さんの忠告も聞かず、こんなイベントに参加してしまったことを心の底から後悔し、瑞貴の無惨な姿と、近い未来の自分が重なり、どうしようもない絶望感に押し潰されそうになった。
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