第16話 絶望

そして、瑞貴を映していたモニターが、今度は絶望的な物を映し出す。


「何だ、アレ……?」


陸斗の声が聞こえてきた。モニターは天井を映している。そこには、横長の銀色に光る刃が見えた。刃の上には木の板が付いていて、そこからロープが伸びている。


「あ……あ……」


また映像が瑞貴を映し出したけど、その顔は真っ青で血の気が引いていた。


「金の靴が履けるように、貴女の足を切り落としてあげましょう」


「う、そ……でしょ?冗談、よね……?」


唇を震わせながら、瑞貴が呟く。


でも、その言葉も虚しく、次の瞬間、天井に吊るされた刃が勢いよく振り落とされた……!



「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ…………っ!!」


断末魔のような瑞貴の悲鳴が、モニターを通して広間に響き渡る。


「瑞貴……っ!!」


叫んでもどうしようもないのに、気づくと叫んでいた。他のモニターからも、いくつもの悲鳴や叫び声が聞こえてくる。瑞貴は気を失っているのか、一度聞こえた悲鳴の後、彼女の映っていたモニターは静まり返っていた。


そして……


「うっ……!!」


今映っているモノを見て、吐き気に口を手で覆う。


そこには……真っ赤な絵の具を撒き散らしたような、おびただしい量の鮮血と、指先のついた足の一部が床に転がっていたのだ。


そんな……っ!!あり得ない……!!こんなことあり得ない……!!悪夢なら早く醒めて……っ!!


(瑞貴……っ)


妹の瑞穂ちゃんがあんなことになったのに、瑞貴までこんなことになるなんて……!!


私の脳裏に今年3月に起きた、ある事件が蘇ってくる。この地域を震撼させた、あの事件が……。

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