第14話 アトラクションの意味

そこで、黒崎さんと瑞貴のモニターがいったん真っ暗になる。


「な、何!?何が起きたの!?」


他のモニターに映る生徒達の間にも動揺が走った。しばらくすると、一番左のモニターの画面が再び明るさを取り戻す。


「……!」


その画面を見て、また驚いた。


そこに映っていたのは、玉座のような椅子に座らされ後ろ手を縛られた瑞貴の姿があったから。


「瑞貴!?」


私は思わず声をあげる。瑞貴は気を失っているのか、瞼を閉じ首が少し傾いていた。


すると、一番上のモニターに映った紫のローブの人物が話し始める。



「君達は『シンデレラ』の原作を知っていますか?これはグリム童話の中の一作品。グリム童話というのは、ヤーコプとヴィルヘルムのグリム兄弟が編纂したドイツの民話集です。1812年に初版第1巻が、1815年に第2巻が刊行され、著者の生前から数度改訂されつつ版を重ねられました」


何だろう、この人……。やたら童話について詳しいな。


「よって君達は、原作とはかなりかけ離れたストーリーを聞かされているわけです。しかし、私は原作のストーリーこそが真に素晴らしい教訓であり、語り継がれるべきフェアリーテイルだと思っています」


ローブの人物は両手を広げて、私達に訴えかけるように続ける。


「だから、私は、この素晴らしいフェアリーテイルの原作を忠実に再現するアトラクションを作ったのです」


格好からしておかしいと思ってたけど、話を聞いていると、どこか狂気じみた空気さえ漂う。


「『シンデレラ』の原作はこうです。母親を亡くした一人の娘の元に、新しい母親だと名乗る女と、その二人の娘が家にやって来る。それは、彼女の父親の再婚相手と、その連れ子だった。それからというもの、その娘はシンデレラ(灰かぶり)と呼ばれ、その三人からひどい仕打ちを受けるようになる」


中性的な声が、モニターを通して私達のいる広間に響く。


「そして、ある時、国王が王子の花嫁を選ぶために三夜連続で舞踏会を開くことになった。シンデレラは舞踏会に出たいと願うが、継母達に意地悪され、行くことが出来ない。

しかし、母の墓の側に生えているハシバミの木にお願いをすると、白い小鳥たちがシンデレラに美しいドレスと靴を持ってやってきた」


あれ……?魔法使いが現れてドレスとかをくれたんじゃなかったっけ?


「そして、シンデレラは舞踏会へ行くことが出来、彼女の美しさに惹かれた王子にダンスを申し込まれる。しかし、12時の鐘が鳴ると、シンデレラは逃げるように家へと帰ってしまった。そして、最後の舞踏会の夜。やはりシンデレラは逃げるが、王子が階段にヤニを塗っていたため、シンデレラの金色の靴が絡めとられてしまった」


……え?シンデレラの靴って、王子がわざと残させたの?それに、ガラスの靴じゃなくて金の靴?

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