第13話 勝者と敗者

瑞貴達の映ったモニターの時間表示が「10:00」になった。そこで、ずっと黙っていた瑞貴が黒崎さんに言う。


「黒崎君。私、何も思い付かない……。お願い、何かダウトを言って?」


「……」


「こんなおかしなゲーム早く終わらせたいの……」


瑞貴の言葉に、少しの間黙っていた黒崎さんだったけど、ため息をついた後言った。


「仕方ないな」


そして、黒崎君は、さっきのルール通りの言葉を口にする。


「ダウト。テストの時、カンニングしたことがある」


……え?そうなの?意外だ。そんなことしなくても全然点数取れそうなのに。バイクで、ここまで来たことと言い、黒崎さんは意外なことが結構あるな。


「えーっと、私は……」


少しの間、考え込んでいた瑞貴が口を開いた。


「ダウト……って言えばいいのかな?えっと……」


そして、瑞貴が言う。


「ダイエットとか何もしてない、太らない体質なんだって言ってきたけど、ほんとはすごい気を使ってるの。めちゃくちゃカロリー計算してるし、夜はスムージーしか飲まないようにしてる……」


そうだったんだ……。通りで瑞貴痩せてるはずだ。ずっと体質なんだって思ってたけど。私と違って背も高いから、すらりとして、ずっと憧れてた。


でも、それは努力の結晶だったんだね。


嘘や秘密というには可愛い告白に、緊張感が一瞬和らいだ。そんな私と対照的に、相変わらず感情の分からない冷静な声が、上のモニターから響いてくる。


「ダウト終了」


その声を合図に、右上のタイマー表示が「07:15」で止まった。


「では、勝敗を決めます」


紫のローブの人物が言った後、その画面一杯に、次の表示が現れる。



『Winner 黒崎 秀一


 Loser 早川 瑞貴 』



な、何?瑞貴が負けたってこと?


何かでも二人の嘘って、一概にどっちが大きな嘘かなんて比べようがなくない?どういう基準なのよ?


相変わらずゲームの趣旨も、その勝敗の決め方も分からないことだらけのまま、壁のモニターを見つめ続ける。


「では、敗者の早川 瑞貴。あなたには罰を受けてもらいます。これからゲームを控えた皆様も、よくご覧になっていてください」


ローブの人物の言葉に、少し震えるような声で瑞貴が呟いた。


「な、何なのよ、罰って、一体な……」


そこまで彼女が言いかけた時。


予想もしない出来事が起こった。


「……えっ!?」


短い声と共に、瑞貴の足元の床が、下に向かって急に開く。


「きゃっ……!!」


足場を失った瑞貴の体は、そのまま見えない床下へと落下して行った……。

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