第10話 謎のゲームへ

「とりあえず指示通りに、それぞれのアトラクションに行こうぜ。普通に遊ぶより、案外楽しいかもよ?じゃあ、行きましょうか、九条さん」


そう言うと、矢部君は、ペアになった九条さんの方を見る。まだ納得していない表情の九条さんだったが、指定されたアトラクションへと向かう矢部君の後を追うように渋々歩き始めた。


「あ~あ、九条先輩と組みたかったのに」


矢部君と移動する九条さんの後ろ姿を羨ましそうに見つめる宮野さん。


「……じゃあ、俺らも行こうか、白雪姫のアトラクションに」


「はぁ……」


陸斗の呼びかけにも、宮野さんは、まだ残念そうなため息をついた。そんな彼女の様子に困った顔を一瞬した陸斗だったが、指定された白雪姫のアトラクションへと向かっていく。


「村上先輩。笹原先輩とペアで、すんません」


田部君が、陸斗の背中に向かって言うと、なぜか赤面した陸斗がくるりとこちらを振り向いて叫んだ。


「お前、後でホントしばく!」


それだけ言うと、指定のアトラクションへと歩いていった。


「早川。俺達も行くか」


今度は、黒崎君が瑞貴に向かって言う。


「……」


でも、瑞貴はまだ迷っているのかうつ向いて黙っていた。


「田部の言うように、ゲームをしてみて、つまらなければ止めればいい」


その言葉が後押しになったのか、少しの間の後、瑞貴は指定されたシンデレラのアトラクションに向かい始める。


「じゃ、俺らも行きましょうか、笹原先輩」


田部君が、私を見ながら言ってきた。


「うん……」


私は小さく答えると、彼と一緒にラプンツェルのアトラクションへと向かい始める。



これが、私達8人が揃っていた最後の瞬間だった……。



「えーっと、ラプンツェルの場所は……」


私はアナザーワールドの運営から送られてきたメールを確認する。そのメールには、フェアリーテイル・ゾーン内の各アトラクションの位置が示されていた。


「こっちを左に行ったところね」


私は、メールの地図通りに田部君と進んでいく。


「これっすね」


田部君が、ある建物の前で立ち止まった。


その建物は、緑を基調としていて、所々に花が咲いた装飾があって、少女の長い金髪が蔦のように入り口を縁取っている。


入り口の右側には、受付と思われる場所があったけど、今はまだオープン前だから、暗くて誰もいない。


「とりあえず、中に入りましょうか」


田部君の声に私は頷くと、彼と一緒にアトラクションの中へと入っていった。中に続く通路は薄暗くて、その闇を照らすように、オレンジ色の照明が、等間隔に足元を照らしている。

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