第5話 迫り来る始まりの時
その車から、陸斗と、陸斗と同じバスケ部の
「じゃあ、また後で」
矢部君が、外から運転席に向かってそう言うと、白のワンボックスは走り去っていく。陸斗達三人の男子が、石段を上ってきて、私達のところに来た。
「美羽、来てたんだ」
「うん。陸斗、誰かに送ってもらったの?」
「ああ、真の兄貴に送ってもらった」
「そうなんだ。あの……矢部君の隣って、誰?」
見慣れない男子を見ながら私が聞くと、陸斗が答える。
「ああ、コイツは、真の友達で一年の
紹介された田部君は、私達に向かって軽く頭を下げた。その後、なぜか私の方をじっと見てくる。
「これが噂の笹原先輩ですね」
「……?」
何よ、噂のって。
すると、なぜか陸斗が焦ったように咳払いをする。
「田部、余計なこと言ってんなよ!」
「すんません」
田部君はニヤニヤ笑うと言った。
「また、うちの生徒なの?」
陸斗達を見て、九条さんが訝しげに言う。確かに、うちの高校の生徒達以外、誰も見当たらない。
だけど、まさか私達だけがイベント当選者とも思えないし……。
「九条先輩も一緒なんて、俺、感激です!」
田部君が、今度は九条さんに視線を送りながら、興奮気味に言った。
「……別に、あなたと二人で来てる訳じゃないから」
田部君の視線をいかにも、うざったそうにしながら、冷ややかに九条さんが言う。
「もう、そろそろ時間だよな?」
陸斗がスマホの時刻表示を見ながら呟いた。私も、バッグからスマホを取り出すと、トップ画面に表示された時間を確かめる。
時刻は、18時50分。
その時、今度は石段の下で、バイクの走行音が聞こえてきた。
(誰?)
フルフェイスのメットを被っているので、顔が見えない。その人物は、バイクを停めてエンジンを切ると、メットに両手をかけた。
(えっ……?)
メットの下から出てきた顔に、私は驚く。
それは、三年の
直接話したりしたことはないけど、校内で有名な人なので知っている。常に学年トップの成績で、全国規模の模擬試験でも、1桁台の順位らしい。
さらりとした黒髪に、フレームの細い眼鏡。長身で切れ長の瞳に、高校生には見えない落ち着いた雰囲気をまとった彼は、女子生徒の間で人気が高い。
でも、私は、どこか他人を寄せ付けないような冷たい印象を持つ彼をあまりいいと思えない。
それにしても意外だな。バイクなんて乗ってるんだ。あと、ここに今来たってことは、きっと私達と同じでアナザーワールドのイベントに招待されたんだろうけど、そういうのに当たっても参加しなさそうな感じなのに。
黒崎さんが石段を上り、私達の近くまで来ると、九条さんが彼を見ながら言った。
「黒崎。あなたもイベントに招待されてるの?」
「ああ」
クールな声で、黒崎さんが答える。
「まったく、どうなっているのよ?集まるのは、榊原高校の生徒ばっかりじゃない」
九条さんがそう言った、その時だった。
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