第6話 誘い

「……!」

急に、門の向こうのパーク内が一斉に明るくなる。見ると、パーク内の外灯や施設の電飾に明かりがついていた。


『♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪』

そして、不思議な曲調のオルゴール曲が流れ始める。既存の曲なんだろうか?どこか懐かしく、切なく悲しげな旋律に、夕暮れ時の園内が、不穏な空気に満ちていく。

「おっ、門が……!」

陸斗が声をあげる。さっきまで固く閉ざされていた黒い正門が、ギギィィと重低音を響かせながら開いていく。


『ようこそ、アナザーワールドへ』


不意に、パーク内に放送が流れ始める。


『皆様、今夜は当施設にお集まり頂き、まことにありがとうございます。ご招待したお客様が揃いましたので、これより開園いたします』


え……。揃ったって……。

私達8人だけってこと!?

私は改めて、今いるみんなを確認した。


まず、クラスメートで二年の村上陸斗。

そして、同じくクラスメートの早川瑞貴。

陸斗と同じバスケ部二年の矢部真。

同じく二年の宮野由奈。

矢部君の友達で、一年の田部進也。

そして、生徒会長三年の九条綾音。

同じく三年の黒崎秀一。


最後に、私、笹原美羽。

みんな榊原高校の生徒ばかりだ……。


「どういうことだよ?俺らだけって……」

戸惑うように陸斗が呟いた。

「とりあえず、行ってみようぜ」

矢部真は、そう言って、開け放たれた黒い門を抜け、先へと進んでいく。

「……そうね。ここにいても仕方ないし、入ってみましょう」

そして、九条 綾音も、アナザーワールドへと足を踏み入れていく。

「九条先輩、待ってください~!」

慌てて、宮野 由奈が、その後を追う。


「しょーがねーな……行くか、俺らも」

陸斗の声に、私もアナザーワールドへと足を踏み入れた。

「確か、この中のフェアリーテイル・ゾーンのとこに行けばいいんだよな?」

陸斗は歩きながら、スマホを取りだし、画面を見つめた。


アナザーワールドへのイベントの招待メールが来た数日後、同じく運営を名乗るサイトから、今度はパーク内の地図がメールで送られて来ていた。陸斗が見ているのは、その地図だ。私も陸斗と同じように、アナザーワールド内の地図のファイルが添付されたメールを改めて確認する。


このテーマパークは、日常では体験できない世界を再現していて、五つのエリアから成り立っている。

その内の一つ、アニメやゲームの世界を体感出来る「アニメ&ゲーム・ゾーン」。

次に、宇宙空間を体験出来る「スペース・ゾーン」。

恐竜のいた時代を再現した「ジュラシック・ゾーン」。

世界の神話世界を模した「神話ゾーン」。

そして、童話世界を体感出来る「フェアリーテイル・ゾーン」。


この五つだ。

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