第156話 意図せず異性と2人きり?
《お嬢様がどう思っているかまでは把握しておりませんので、そんなに私達の意見を当てはめて鵜呑みにする必要はないかと。それではいってらっしゃいませ~》
(ルリトのお屋敷を出発する間際追いついてきた和葉からそう言われて送り出されたけど、そんなこと言われたって気になるじゃないの……。そりゃあ私が正直にって念を押した訳だけど……)
理屈では表現できないようなちょっとした不満を抱えながら、私は水島家へと距離を縮めていく。まあ行き慣れたと言えるいつもの道だ、家の前で自分の存在を知らせると、箕崎真衛が出迎えてくれた。
二言三言会話を交わしながら廊下を歩き、居間へたどり着くまでに私が訪れた理由について話題にあげる。
「なんか人手不足だから手伝いが欲しいって和葉に聞いて来たんだけど……?」
「っ……別に僕は何も頼んでないはずだよ……?」
「……??」
どういうこと? 認識の食い違いも気になるが考えても今は答えの出ない事柄だとすぐに気付いたので私はもう一つの気になることに話を移す。
「ゆずは達は……? 部屋にでもいるのかしら……?」
普段はここで過ごしているはずの三姉妹が今日はおらず、居間ががらんとしているのだ。
「今は出かけてるから家にはいないかな。だから人手が無いと言えばその通りなんだけど……」
なによ、ゆずは達誰もいないの……? これじゃ箕崎真衛と家の中でふ――ふたりっきりみたいなものじゃない。一応円香が2階にいるのかしら、円香も出かけてないかとりあえず聞いてみた方が良いわよ――
「箕崎く~ん? それじゃあ私も少し家を空けるから、後はよろ――あら? リシアちゃん来てたのね~」
ちょうど話題にしようとした本人が階段を下りてきたので省けた分の手間を省略しながら会話を続ける私。
「今私にはあんたも外出するって聞こえたんだけど……ゆずは達もいないんでしょ? 私と箕崎真衛をここに置いていくことに大人として何か思うこととか――」
「ん~特にないけど? もしかしてだけどリシアちゃん、箕崎君を警戒してるの? 大丈夫よ~箕崎君が何回ゆずはちゃん達とお風呂に入って、何回無防備な姿を晒しながら一緒に眠って、何回えっちってゆずはちゃん達に言われるいやらしくて恥ずかしいハプニングに遭遇したと思ってるの? 数えきれないほどの経験を積み重ねてもなお揺らがないメンタルなんだから、今更な~んにも心配してないわっ」
「あの……確かに数えては無いですけど、すごく語弊があるというか誤解されそうな気がする言い方やめてください……」
嬉々として女の子っぽい顔立ちの箕崎真衛を可愛がりながら語る円香とそれに突っ込みを入れる箕崎真衛は何度も見た光景だけど、円香の発言で私の緊張が全て解けたかといえばそんなわけない。異性と2人きりという状況下なら意識くらいはする。
「じゃあそういうことで、後はお若いお二人に任せるわ~」
そんな私の内心を気にも留めずに意味深な台詞を発しながら円香の姿は玄関の扉の先へと消えていった――。
「……えっと、とりあえず、居間に座っててくれていいから――」
「え、ええ……そうするわ――」
箕崎真衛に促されつつも、私は決して平常心ではいられなくて――。
(箕崎真衛とふたりっきりとか、ど~やって間を持たせればいいのよっ! 箕崎真衛達と過ごした時間の何倍も引きこもってた時期の方が多いからっ、小さい頃と違って今の私の本質はあまり積極的に他人と関わろうとしないっていうか、自分から友達増やさないっていうか……コ、コミュ障なのにっ!!)
〇 〇 〇
(さっきの会話を聞いたりしてますとな~んかリシアさんがマモルさんとふたりっきりで焦ったり動揺してるように感じられまして……リリムの存在カ~ンゼンに忘れられてると思いますね~。マモルさんとマドカさんはリリムのこと数えてますから2人きりの認識は無かったんでしょうけど。まあリシアさんの慌てふためきが面白いのでしばらく現れてあげませんけどね~)
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