第153話 そわそわが抑えられない時間帯

 今日は皆さんが普段起きる時間をとっくに過ぎてからゆっくりと水島家居間にやってきたリリムですが、見渡すとマドカさんを含めた女性陣が思い思いの日常を過ごしていますです。

 いつもの面々というには1人足りません。それもそのはず、マモルさんは予定があることを前もって伝えていたので今日は当然その用事のために外出しているのでしょう。

 過ごしている行動自体は特別代り映えしないものなのですが、マドカさんを除く3人からはなんだか純粋に目の前の趣味を楽しめていないかのような表情がリリムでも読み取れます。ゲームをしているマミさんはプレイに身が入っていないように見えますし、アイスを食べているコノミさんはゆっくり食べすぎて周りに残っている大量のアイスを溶かしていますし、ユズハさんはただひたすら意味もなく長い毛糸を編んでいるだけに思えます。

「箕崎君、今頃はルリトちゃんと楽しくいちゃいちゃスキンシップとかそれ以上のコトしながら過ごしてるのかしらね~」

 ふいに雑誌を読んでいたマドカさんが今この状況下で触れてはいけないかのような地雷級のパワーワードを呟きました。

「「「っっっ!!」」」

 動揺を抑えきれなかったのかマミさんはゲームをミスしてしまいました。コノミさんは口の中に入れた銀製のスプーンを強く噛んでしまったようで悶絶していますです。ユズハさんは使用している木製の棒を指へ強く突き刺してしまった痛みに耐えているようです。

「ルリトちゃんからのお誘いだって聞き出してるし、箕崎君もさぞ新鮮で嬉しかったんじゃないかしら?」

「だ、大丈夫だよきっと……。あのルリトちゃんとお兄ちゃんに限って……ぼく達とおんなじように2人で出かけてるだけだろうし……」

「そうだといいけれど……真実ちゃん達も箕崎君ともうそこそこ結構な頻度家族みたいに毎日顔を合わせてるわけじゃない? 人間いくら最初が新鮮に感じてても、慣れっていうか飽きっていうのがどうしてもね~っ。私もいろんなことを頑張ってみたけど、飽きることはどうしても付きまとってきちゃうし……。そんな中でルリトちゃんからお出かけ中好意を示されたらぁ――」

 マドカさんが頬に手を当てるなどややオーバーなリアクションでマミさん達の不安を煽ることが出来るのは逆にマモルさんを信頼している証なのかもしれませんが、当事者のマミさん達にとっては気が気ではないようです。じっとしてはいられないような雰囲気が伝わってきますです。

「それにルリトちゃんと箕崎君って性格が似通っててお互い安心できると思うのよね。言いたいことを察したりしなくて良いし」

「っっ……」

「理不尽に怒られないし」

「ぐっ……」

「執拗に甘えたりされなくて煩わしい時もないし」

「わずらわしい時……あるのかな……」

 3人とも痛いところをつかれてさらに不安を募らせます。正直リリムはその部分を含めて皆さんの魅力だと思いますけど、マドカさんはそれすらもわかっていて話しているのかリリムには答えを出せません。

「…………行くしかないわ」

「っ……?」

「お姉ちゃん……?」

「余計なことを考えてると胃にストレスがかかりすぎて耐えられないもの。ルリトちゃんがいったいどういうつもりで誘ったのか、万が一にも円香さんの妄想したようなことは無いにしても、一応確認はしておかないと……」

「ぼ、ぼくもどうやったって眠れなさそうだし……」

「私も、ほんの少し気になります……」

 決意の固まった3人がそそくさと準備を始めるのを、マドカさんは生暖かい目でにやにや見ていました。いい加減一途な乙女心を弄ばないでほしいと思いますですが……。

 ちなみに今回リリムはパスしようかと思っていますです。ユズハさん達の心配する気持ちはとてもよく理解できるのですけど、正直リリムが求めるユズハさん達の時以上の恋愛展開はあまり期待できそうにもありませんので……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る