第149話 訪れるその時まで――見学者達の見解
「きっ、来ましたっ! 正直最初はこんな展開に立ち会えるなんて全然期待してなくて半ば諦め気味だったのですがっ、ここまでついてきたかいがありましたっ! 思わず大きな声を出しそうになっちゃいますっ!」
「ちょっ、えっ、いっいいのっ!? 確かに私達にとっては目が離せない展開だけど、ゆずははっ? このみはっ? 決めちゃったってことっ!?」
「ですけどいつ起こってもおかしくありませんでしたっ。あとはもう誰が最初に気持ちを伝えるか状態だと思ってましたもんっ! それでもマミさん達が臆していた理由もわかりますっ。ひとつ屋根の下あんなに距離が近い状態で、もし仮に断られたとしたら気まずいなんてもんじゃないですからねっ。今回はマミさんが覚悟を決めたというだけのお話ではないでしょうかっ」
「ま、まあそう言われればそんな気もしてくるわね……」
「……あ、あの」
「今までの関係をずっとヤキモキにやにやしながら見守っているのもそれはそれで楽しかったんですけど、当人達が選んだのであれば仕方ありませんっ。リリム達は見守っていくことしか――」
「あ、あの……っ! お話の腰を折るようで申し訳ないんですけど……」
「どうしたんですかルリトさんっ? 今はマモルさんやマミさんと一緒にリリム達もこの後の展開に燃え上がる時――!」
「ほ、本当に真衛さんは、真実さんの告白を、了承したんでしょうか……?」
「っ――」
「ど、どういうことかしら……?」
「……なっ、何言ってるんですか~ルリトさんっ、現に今マモルさんとマミさんはいちゃいちゃしててキスまでしようとしてるんですよ? 了承したんじゃないんだったらそんなこと――」
「それが告白を断られた真実さんの、せめてものお願いだとしたらどうですか……?」
「えっ……」
「そ、そんなまさか……」
「真実さんが思い出として、このお出かけが終わるまでは恋人みたいに接してほしいと頼み込んだ。真衛さんなら、このお願いを断らないと思います……」
「で、でもっマミさん、マモルさんが付き合ってくれて嬉しいって……」
「自分のお願いに付き合ってもらったと考えれば、説明はつきます……」
「……」
「…………」
「少し、不自然だと思ったんです。気持ちを受け止めてもらったのだとしたら、この先いくらでも時間があるのに、真実さんが進展を焦りすぎのような気がして――」
「一応、今まで秘めていた想いが解き放たれたようにも考えられますけど……」
「真衛さんも、伝えられてからこの短時間でいきなり返事をするとは思えないんです。真衛さんなら、やはり一旦落ち着いて考えるために猶予を貰うんじゃないでしょうか……」
「……ま、まだルリトさんの言う通りと決まったわけじゃありませんっ! そうですよねっ!」
「は、はい……わたしもあくまで浮かんでしまった推測を述べただけで、そんな展開は望んでないです……っ」
「ま、まあとにかく、事の成り行きを見守りましょ? それにしても、ここじゃ角度的にどんな風なのかちょっとよく見えないわね……」
〇 〇 〇
僕と真実は、お互いの瞳を見つめたまま目を離さないでいる。僕を見上げる真実の瞳は不安を秘めた女の子らしさを存分に纏っているような気がして、頬は情熱的な台詞を発していた時よりは、幾分かほんのりとした感じにやわらいでいるような気がしないでもない。身長の差から考えて真実はつま先立ちの背伸びをすることになるだろうし、僕もある程度真実に合わせる形になると思う。どうしても緊張が抑えられないけれど、真実も同じような気持ちなのだろうか。沈黙が辺り一帯を包んでいて、もう言葉を交わすような距離の近さじゃない。あとはただ、お互いの意思を行動に移すだけ。そのままゆっくりと、僕達はさらに距離を縮めていった――。
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