第135話 最初のお出かけは彼女と滞りなく
一足先に外へと出た僕は、携帯電話を確認しながら同じく水島家から出てくるであろう女の子を待っていた。大きなイベント事だと水島家全員で行くことが基本なのだけれど、近くへ手軽に出かける場合などはゆずはさん達みんな行きたい場所が違うらしい。真実からのお願いをきっかけに僕は出かけるゆずはさん達それぞれに付き合うこととなっている。
それほど苦もない待ち時間が過ぎた頃、玄関の扉が開く音を聞いたので僕の視線は自然にそちらへ向いていた。
「すみません真衛さん、お待たせしてしまいました」
艶やかな長い髪を少し押さえて歩いてきたゆずはさんは落ち着いた雰囲気をまとったストライプ模様の上着にロングスカートといった感じの服装で、髪型も普段とは違い横に垂らして何度か緩くまとめられている。
「………………」
その新鮮な姿を視界に入れてからゆずはさんが違和感を持つくらいの時間僕は一切動けなかったわけだけど、そのせいでゆずはさんは少し不安を覚えてしまったようだった。
「あ、あの……似合いませんか? どこか変だとか――少し、挑戦しすぎたのかもしれません……」
「いっ、いえっ! そんなことっ! なんというかその……とても新鮮でえっと、すごく驚いたというか――」
「……その、良い方向に受け止めても大丈夫でしょうか……?」
「も、勿論です……。それじゃあその、出かけましょうか」
少しぎこちない会話となってしまったけれど、ゆずはさんも静かに頷いてくれたようで、僕達は目的の場所へと並んで歩き始めたのだった――。
〇 〇 〇
「ヘタレたわね」
「ヘタレましたね」
リリムから箕崎真衛達の会話を伝えてもらっている私は、おそらく今のリリムと全く同じ半目状態で視線の先にある光景を眺めている。
「今までどれだけの間一緒にいるのかわかってるのかしら。素直に認めなさいよゆずはに見惚れてたって」
「今のはもう少しはっきりとした言葉が欲しかったですね。とはいえいちゃつ――仲良し具合はなかなか高いんじゃないでしょうか」
「ゆずはさん、わたし達に感嘆のどよめきが起こるくらい素敵でしたね~」
「確実にマモルさん意識ですよ。二人きりの外出時くらい普段よりぐれーどあっぷした自分を見せたいですもん」
「ふむ……まあとりあえずこのまま追跡を続けましょう。それにしても、ゆずは達はいったいどこへ向かうのかしら。一緒に住んでるリリムなら、何か聞いたりしてないの?」
「そうですね……毎回決まった場所に行く訳じゃないでしょうし、おそらく出かけるということしか聞いてないと思います。現在の会話からも、目的地は特定できそうにありませんね」
「ふ~ん、一応足が止まってないから当てもなく動き回ってるわけではなさそうだけど……。それにゆずはがあんなに会話し続けてるのも初めて見たわ。大体まとまっている時に話すのはこのみか真実で、ゆずはは後ろで表情だけ変化させてる印象だったから……」
「マドカさんが尋ねてましたけど、マミさんが感情面、コノミさんが理屈面で話を進めてくれるので、よほど自分の意思と違ったりしない限り口を開かなくても大丈夫だそうですよ? 話すこと自体も別に得意という訳ではないとも言っていました」
「なるほど、意外と新しく気付くことがあるものね」
「その新しい発見ということにして、場所についてはお楽しみとさせて頂きましょう。この後にはいったいどんなマモルさん達のプライベートがあるのかワクワクものですねっ」
「私も余計気になってきたわ、ふふふふふ……」
「……リシアちゃんとリリムさん、悪い顔でものすごく面白がってます……」
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