第134話 彼らをひそかに調査し隊
弱点探し&素行調査決行日当日。結局水島家玄関付近へと連れてこられてしまったわたしは、遮蔽物である壁に隠れながら様子を窺っているリシアちゃんの袖をほんの少し引っ張ります。
「リ、リシアちゃん、こうしてみるとわたし達の行動、どこからどう考えてもすと~か~なんじゃ……」
「いいえ、私達はお願いされてここにいるの。依頼を受けて調査が出来ないんじゃ、探偵業は務まらないでしょ」
「それ以外にも私的な目的がたくさん含まれている気がします……。えっと、わたしどうしても付き合わないとだめでしょうか……」
「私の心情的にすごく心強いわっ。ルリトだって今回の調査内容、気になるでしょ?」
「確かに気にならないと言えばうそになりますけど……」
「ルリトと一緒に調査したいって理由以外にも、見つかってしまった時に言い訳しやすいじゃない」
「わたし、かもふら~じゅ要員ですか……」
「菓子パンと飲み物も用意したし、これ以上の探偵らしさは存在しない完璧な尾行準備ね!」
「……あの、流石に映画などの創作に影響を受けすぎなのでは……。リシアちゃんが今着ている衣装もそうですし、いかにも探偵ですみたいな格好で後を追っていたら、逆に怪しさが増してしまうんじゃないかと……」
「っ、う~ん、言われてみれば……。まあせっかく羽織って来たんだし、初めての時くらいは雰囲気を楽しんでもいいでしょ。箕崎真衛達が来る前に合流だってしないといけないんだけど……」
「? わたし達以外にも誰か参加するんですか……?」
わたしが疑問に思いながら小首をかしげていると、ちょうど斜め後ろに誰かの気配を感じました。
「すみません、遅くなりましたですか?」
振り向いたわたしの視界にはピンク色の子猫が一匹。初めて見るのであれば驚きますけど、存在について説明を受けているわたし達からすれば、たとえその子猫が言葉を話そうと既に珍しさが薄らいでいる状態です。
「っ、リリムさん……」
「大丈夫よ、まだ箕崎真衛達は出てきていないわ」
「きっともうすぐなはずです。一生懸命準備していましたから」
「えっと……リリムさんもここにいるということは、この調査に乗り気……なんですよね……?」
「ふふん、愚問ですねルリトさん。二人きりのお出かけですよっ? どこからど~見てもで~とじゃないですかっ! マモルさん達がどんな風にいちゃつ――過ごすのか、マモルさん達を見守る存在として調べないわけにはいかないんですよっ!!」
目を輝かせて力説するリリムさんにわたしは苦笑いを返します。真衛さん達のお出かけ模様が気になる気持ちはわからなくないんですけどね……共感は難しいですけど。
「リリムはこの姿なら私達より耳がよく聞こえるみたいだから、箕崎真衛達の会話を私達に伝える役割としても協力してくれるらしいのよ。調査準備としてはさらに盤石ね」
「普段はそこまで会話を拾っていませんが、研ぎ澄ませれば何とか可能だと思います。頑張りましょう!」
リリムさんは呼吸粗目に意気込んでいます。この状況から考えるとリシアちゃんに依頼したのはリリムさんということで間違いないのでしょうか。わたしがそんな風に考えていた時、扉の開く音が耳に届きました。どうやら誰かが外に出てきたようです。
「っ、箕崎真衛達かしら……?」
すぐに息をひそめたわたし達がそっと確認すると、外出用の格好をした男の子が一人出てきていました。ですがその後少し待ってみても出てきたのは真衛さんただ一人みたいです。
「? 箕崎真衛一人だけ……?」
「おそらく準備に手間取っているんじゃないでしょうか。男の子よりどうしても時間がかかってしまいますから」
わたしの説明に納得した様子のリシアちゃん。それにしても、今日のお相手は三人のうち、いったい誰なのでしょう。行動に罪悪感を感じつつも、やっぱり気にはなってしまいます――。
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