私の止まない探求心
第133話 二物も三物も与えられるアイツ
そろそろ入り浸るという言葉が似合ってきたかもしれないルリトの部屋で、私は置いてある足の短い小テーブルに右頬をくっつけながら呟いた。
「はぁ~まさか箕崎真衛がそんな未知の力を隠し持ってたなんて……」
「子猫の姿から変化したであろうリリムさんにも驚きましたし、本当にあんな現象存在するんですねぇ……」
ルリトは私の呟きに答えてくれながらもノートをめくり、宿題を少しずつこなし続けているみたい。
「別世界の能力持ちで見守られてるって、どうして箕崎真衛ばっかり二物も三物も与えられるのかしら」
「そ、そんなほっぺを膨らませてひがまなくても……」
「需要と供給が一致してないじゃないっ。箕崎真衛はあんまり役立たない扱いしていたけれど、私が使えれば過去をもう少し彩りあるものに出来てた気がするのよね……。いまだにあいつの弱点だって見つけられてないし……」
「っ、ま、まだ真衛さんの弱点探し、諦めてなかったんですね……」
「当然よっ! こうなりゃ意地でも箕崎真衛の欠点をこの目で把握してやるわっ」
「え、え~っと、欠点といえば料理があまり得意じゃないと聞いたことくらいはありますよ……?」
「それじゃあ意味ないのよ。私だって作れないし箕崎真衛の前でドヤれないじゃない。ひとつくらいあいつより優位に立つものでないとっ」
「…………欠点じゃないですけど、真衛さんも真衛さんで苦労してること、多いと思いますよ? 円香さんに結構な頻度で絡まれているみたいですし、女の子の格好させられたりとか……」
「そりゃあある程度分からなくもないけど、何かこう決定的じゃないと私の気が納まるには足りないわっ。例えばそうね……真実と仲良くしてるし、実は小さい女の子が大好きなロリコンその他特殊な性癖とか――」
「ゆずはさんやこのみさんとだって同じように接してると思いますけど……真実ちゃんだって一応真衛さんと同い年ですし……」
「確かに……う~ん小さい女の子も含めて大好きなロリコンでもある――みたいな?」
「さ。さすがに仮定自体が間違っているのではないでしょうか……」
「まあそうだったら天使のルリトと許嫁の立場を利用しないはずないか……」
箕崎真衛に対しても優しいルリトの浮かべる苦笑いが見えつつも、私は少し下を向いて嗜好を巡らせる。だけどいくら私が推理しても納得できるものは浮かんでこない。情報よっ、どうしても情報が少なすぎるんだわっ。
「うんっ、やっぱりここであれこれ考えていても始まらないわよねっ。和葉が言っていたようにもっと観察してみないとっ」
「は、はあ……。また真衛さん達の家へ遊びに行くんですか?」
「いいえっ、遊びにはさんざん行ったけど同じことだけ繰り返していても成果は薄いと思うのっ。そしてそんな時私はとある情報を手に入れたわっ。箕崎真衛達は普段みんな一緒に行動していても、時折ゆずは達それぞれ一人ひとりと出かける時があるみたいなのよ」
「ま、まあ一緒に住んでいればそういうこともない訳じゃないと思いますけど……」
「それでね、今回はその行動をゆずは、このみ、真実ごとにそれぞれ調べてほしいっていうお願いごとを引き受けているわっ。さっきの情報も依頼主が提供してくれたものよ」
私は言いながら用意していたジャケットと探偵帽子を身に着けてみる。自分で思うのもなんだけど、結構似合ってるんじゃないかしら?
「そんな素行調査みたいな頼み事なんてあるんですね……。そしてその探偵グッズのようなものはいったい――」
「これ? 調査のこと考えてて難しい顔してたら絡んできた和葉に貸してもらったの。ルリトと仲良くするからには箕崎真衛の情報は少しでも多く手に入れたいって言ってたわっ」
「和葉さんの入手経路も気になりますけど、真衛さんのプライバシーってそ~と~低く見積もられているような気が……」
「ふふふっ、実行日が楽しみね。ルリトと一緒なら調査もしっかりこなせる自信しかないしっ!」
「っ、えっ……? わたしも……なんですか?」
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