第128話 アミュスフィア
溶けかけたアイスを早めに食べ終えたリリムちゃんはみんなの動揺が収まり自分の方を向いたことを確認すると、自分の口元を少しひと舐めしてからもう一度話し出す。
「そもそもリリムが前に使って見せたような力の源は、《アミュスフィア》と呼ばれるものからきています」
「あみゅすふぃあ……?」
「聞き慣れない単語ね……?」
「アミュスフィアはリリム達の世界の全てを形作っている存在と言っても過言ではありません。リリム自身も言ってみれば、アミュスフィアが結びついた集合体というわけなのです」
リリムちゃんはそう言いながら胸元付近に両手をあてると、あてた部分から黄緑色の光が溢れだし、僕達が驚いているうちにいつの間にかリリムちゃんは綺麗なカプセル状の球体を手に持っていた。見ていた状況から予想するならば、リリムちゃんが自分自身から取り出したと考えるべきだろうか。
「この中で黄緑色に発光しながらふわふわ浮いているのがアミュスフィアです。これはまだ原型の状態ですが、リリム達の世界ではこのアミュスフィアが空気や水、自然などすべての役割を担い、散らばっているのです」
「わあ~っ、きれ~いっ!」
身を乗り出しながらアミュスフィアを眺める真実にカプセルを手渡しながら、リリムちゃんは話を続けていく。
「傷ついた部分を一時的にアミュスフィアで補えば前に行ったような治癒も出来ますし、リリム達の世界では他にも様々なことが可能です」
「っ、すぐに実感湧かないけど、それがあの時見た不思議な出来事の仕組み――」
「アミュスフィアの特徴として大まかにいうと、ひとつは個体ごとに対応や変化できるアミュスフィアには限度があること。簡易なものであれば大丈夫ですが、高度になると個体ごとに特化したものしか使えなくなります。簡単にまとめれば、リリム達が使える能力の方向性は一種類だけ、かつ根本の方向性が全く同じになることはありません。みんながみんな万能にアミュスフィアを操ることは出来ないのです」
「人それぞれということなのですね……。っ、人ではないみたいですけど……」
「ここまでは皆さんも素直に呑み込めるかと思います。そしてもう一つなのですが、アミュスフィアはより源に近い存在を好むと言いますか、自然体と強く結びつこうとします。故に年月を重ねるほど、その強さを維持するのは難しくなっていくのです」
「それって……一番アミュスフィアの力が強くなるのは赤ちゃん――生まれた時なんですか?」
「そうなりますね。もっとも、当然誕生した直後はその余りあるアミュスフィアを扱いきれませんし、リリム達も爆弾を抱えるようなものと言いますか、後々の対処が困難になるので最初に制約をかけるんですけど……」
僕は黙ってリリムちゃんの話を聞いていたのだけれど、リリムちゃんが一呼吸おいたのを見て大方伝えたい話は終わったのかなと推測出来た。
「こちらでは馴染みのないマモルさんの力もこのアミュスフィアが元となっていて、リリムはそんなマモルさんをじっくり、生暖かく見守っているということです。話せることはまだまだたくさんありますが、これ以上長くなっても聞くのが大変になってきますし、マドカさんに言われた要素はある程度話せたかなと思いますです。マモルさんも少しは自分自身の謎が解けたかとは思いますが……」
「うん、正直僕もこの正体不明の力に不安を抱いていたから、起源がわかって相談できるリリムちゃんがいるだけですごく助かるかな……」
「……今のところそこまで極端な変化が起こっているわけでは無さそうなので、リリムからは特に何かお願いするようなこともありません。マモルさん達にはこれからもいつも通り、ふつ~うに過ごして頂ければ問題ないですっ」
「…………そっか」
リリムちゃんのにこっとした顔に僕も笑顔を返し、ひとまずリリムちゃんの説明は終わりを迎えるのだった。
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