第125話 僕達が把握する子猫の正体

「いや~本当にごめんなさいですマモルさん、証明までしてもらっちゃいまして……」

 ベッドで眠っていた女の子は申し訳なさそうな顔をしている。あの後僕は特にリシアちゃんから睨まれながら必死に誤解を解くための弁明をした――といっても僕自身わかっていることは少なかったので、どうしてこのようになったかの状況を伝えただけだけど。

 説明の最中に女の子が話していた疑惑も解消しようと携帯電話やPCの中身もみんんなに確認してもらっている。プライバシーの欠片も存在しないが、どのみち見られて困るものなんか入っていない。

「えっと、もうそのことは大丈夫なんだけど、君はいったい……僕のことを知っているみたいだし、僕も何故だか、見覚えがある気がするんだ……」

「お兄ちゃんも? ぼくもどこかで見かけた気がしてて……」

「私も、確かに……」

「皆さん覚えてないんですか!? 結構インパクトと神秘さを兼ね備えた完璧に近い登場の仕方だったと後から思い返して達成感に浸っていましたのに……。あ~何がいけなかったんでしょう、ショックです~ストレスのしかかりましたです~」

 真実とこのみちゃんが口を揃える中で、女の子はオーバー気味のリアクション。その時ゆずはさんがおずおずと会話に加わる。

「あの……もしかして、円香さんや真衛さんを助けて下さったことのある……その、リリム……さん? ではないでしょうか……」

「さすがですユズハさんっ! やっぱりユズハさんは器もおっぱいもおっきいですっ! 皆さん思い出しましたか!? あの時からずうっと皆さんと一緒に過ごしてきた、子猫のリリムですよっ!」

 さらっとセクハラ発言を交えながらリリムと名乗った女の子は座っているゆずはさんに抱きついた。確かに言われてみれば今現在、子猫のリリムはどこにも見当たらない。

 そして僕達は以前、リシアちゃんと相対したことがあって……ゆずはさんのお腹部分に頬をスリスリしている女の子は、紛れもなくあの時僕と円香さんを助けてくれた、半透明女の子の姿そのものであった。円香さんも、「そんなこともあったわね~」なんて呟いている。

「あ~……うん、ようやく思い出したっていうか、記憶に当てはまったことはあてはまったんだけどさ……」

「はい?」

「えっと……その、初めて出会った時と、印象が違うっていうか……」

「が~んっ!!」

 そう、おそらくこのみちゃんやゆずはさんも思っているであろうことを真実が代弁してくれたけど、この大きな差こそ僕達の記憶と目の前にいる本人を結びつけにくかった原因ではないのだろうか。あの時はシリアスだったからというだけでは片づけられない食い違いが、僕の中で渦を巻いている。

「そうですよ……本当は登場した時の超ミステリアスでしとやかビューティなキャラを保ったまま入念な準備を経て再登場したかったんですうっ!! なのについベッドの感触をこちら側の姿で堪能しようと思ったら寝入ってしまって……」

 作られた印象と事情を明かされ苦笑いしか返せなくなってしまった僕達。

「……ねえ、ナチュラルに会話してるとこ悪いんだけど……」

 そんな中でずっと話題に入り込むタイミングを窺っていたのかリシアちゃんが口を開く。

「私と……たぶんルリトもずっと置いてきぼり状態じゃない。あんた達は知り合いみたいだけど、そもそもあなた何者? 私達はあなたがあの子猫だったリリムとか言われて混乱しまくってる状態なのよ?」

 ルリトちゃんもリシアちゃんの意見にこくこくと頷いて同調する。確かにあの時リシアちゃんは気絶していたし、ルリトちゃんはそもそもこの出来事に関わっていない。

「……そうですね。こうなってしまった以上、リリムも素性を明かす必要がありそうです。世を忍ぶ仮の姿から自分自身のことを晒す立場、一度やってみたかったのですっ!」

 そう言いながらちょっぴりどや顔を挟みつつ子猫のリリム――改めてリリムちゃんはゆずはさんから離れてしっかりと座りなおした。

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