異界の子猫が明かすこと
第123話 子猫がベッドの中にいるというただそれだけの状態
みんなで歌いながら過ごした時間は僕達の距離をしっかり近づけてくれたようで、特にゆずはさん達とリシアちゃんの接し方がより自然になったような気がする。この変化は僕からしても嬉しいことだし、既に過去となってしまった少し前の出来事をこうして思い出すくらいには印象深い思い出となった。
変化といえば、最近僕の眠るベッドがすごく大きくなったことが記憶に新しい。勿論突然巨大化したわけではなく、円香さんが僕の需要過多解消のためなどと言っていつの間にか用意していたものである。
確かにこれでみんな一緒に眠れるとは思うけど、やはり一人の時ほど気を抜ききることが出来ないので既にゆったりとした空間に懐かしさを感じつつもあった。
基本的には身長の低い真実を挟んで僕とゆずはさん、僕の逆隣りにこのみちゃんといった配置になることが多い。ゆずはさんがすぐ隣だとやわらかい感触を受けそうになったり真実が僕達を見上げるようにすれば僕とゆずはさんでお互いの表情もわかるようになる。真実が僕の上にのしかかってきたりもするためその他いろいろな事情を加味してこの位置に落ち着いた。ベッドを用意した本人である円香さんは僕達の眠る時間に自室で作業というか自分の時間を過ごしていることが多く、いったい何時で眠り始めているのかわからなくてどちらかといえば昼間に密着されている時間の方が長いのである。
と言っても毎日みんなが集まってくるといったわけでもないし、ゆずはさんと円香さんが両隣になったすごく眠りにくい体験も何度かあったので、安眠という点においてはいささか難点のある環境かもしれない。
そして僕が自分の部屋にやって来た理由は携帯電話を取りに来たからである。今現在もルリトちゃんとリシアちゃんが遊びに来ていてリシアちゃんが本格的に仲良くなったこともありガールズトークに花が咲くみたい。異性一人という宿命なのかついていき辛くなってしまった僕は携帯電話を確認したり翼に連絡でもとろうかなと考えながら自室にいる、そんな状況。
携帯電話の更新や内容を確認しながらベッドに座った時、ふとベッドの上に置いた手のひらにやわらかな感触がした。見ると布団の覆っている部分が膨らんでいたので中に枕でも紛れ込んでいるのかなと考えつつも、妙に膨らみが大きくそこまで無機質な感触ではなかったことに違和感を覚え、僕はゆっくりと膨らみ部分の布団をめくってみる――。
「っっ――」
「ZZzzz……」
そこで僕が見たのはさすがに日常からかけ離れた光景だっただろう。つややかなピンク色の髪、普段外を歩いてもほぼ目にしないであろう特徴的な衣装を纏った一人の女の子が、ベッドの中心を占拠していたのだから。
固まったまま動けない僕と違って女の子は僕が布団をめくってしまって睡眠環境が変化したからなのかゆっくりと目を覚まし、僕の方を向かず気付かないままもぞもぞと動き出す。
「ん――眠ってしまいましたか。ユズハさんの服に潜り込むのも良いですが、新しいマモルさんのベッドもなかなか……。マモルさん達特有の香りも染みつき始めている頃です~……」
たぶん心地よさそうな表情をしていたであろう女の子がこちらの方へゴロンと寝返りをうちながら目を開けた瞬間、必然的に動かない僕とばっちり目が合ってしまって――
「…………」
「………………」
女の子も僕と同じような状況になりそのまま数秒が過ぎた後、
「にゃにゃああああああああああああああ!!!?」
女の子が叫び声をあげるのと僕が驚いて勢いよく後ろへ後ずさりし部屋の物が崩れけたたましい音に変化して鳴り響くのは、ほとんど同時だった――。
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