第115話 始まるあいつの弱点捜査
「それにしても、よくお似合いですね~」
箕崎真衛の償いが実感出来て数日が過ぎ、私が送った箕崎真衛の女装写真をまじまじと眺めながら、自分の部屋で感想を呟いているルリト。
「真衛さん自身のことを知らないと、ぜぇったい女の子だって信じちゃいます」
正直ルリトが箕崎真衛について関心を持つのはあんまりおもしろくないけど、まあこの件に関しては無理もないわよね。私から見てもルリトの言葉に一言も反対のしようがないんだもの。
「ちょっぴり悔しさを覚えるくらいってのが怖いわね。でもまあ、これで少しはルリトの恥ずかしさを思い知ったでしょ。ルリトの傷が完全に癒えることはないけど、ヘンセクでスケベな箕崎真衛はしかるべき報いを受けたのよっ!」
「……わ、わたしはそんなに真衛さんが悪いとは思えないんですけど……」
フォローを入れるルリトはやっぱり天使の優しさだけど、それでも意見には反論せざるを得ない。
「いいえっ、ルリトは優しすぎるわっ! それに私、箕崎真衛のとこに乗り込んだときにも偶然重要な情報をいろいろ手に入れたんだからっ」
「……?」
私は疑問符を浮かべるルリトに対して顔を近づけ順番に説明し始めた。
「まず円香が言ってたのっ。『私やゆずはの胸だってタダじゃない』って。この証言から、箕崎真衛にとってゆずはと円香の胸はタダ同然の価値。つまりそれだけ何回もゆずはと円香のおっぱいを揉みしだいてると考えられるでしょ……?」
「っ、う、う~ん……確かにとらえられなくはないですけど、そんな風には――」
「いくらでも操作できるイメージなんかに騙されちゃいけないのよっ! きっと以前に揉んだ大きさからの変化とかを考えながら、時に後ろから鷲掴み、時に前から持ち上げたりして定期的に指が沈み込むやわらかい感触を楽しんでいるんだわっ! 特にゆずはは性格上そんなふうに弄ばれつつも何も言えなくて、毎回辱めに耐えているはずっ!」
「そ、そうでしょうか……」
「まだあるのっ、そのうえ『真実の胸には反応を示さない』とも言っていたわ。故にこう推理出来る。箕崎真衛はゆずはや円香だけじゃ飽き足らず、真実のおっぱいも触って大きさを揉み比べしているって!! 真実や私達のような胸は異性の胸とも思わない巨乳至上主義者なのよっ!」
「は、はあ……」
「他にも、このみの下着を覗いて何度も思い出してるって聞いたし――」
「え、ええっと、リシアちゃん、さ、さすがに少し飛躍しすぎじゃないですか……? ちょっと鵜呑みには出来ないというか……」
「ルリト、よく考えてみて。一つ屋根の下に住んでて、藍方院家別館では一緒にお風呂に入るようなくらいまでの仲なことを私達は知ってるわ……」
「そ、それは……そうですけど……」
「証言と現状証拠が揃いすぎてるのよっ。お風呂場であ、洗いっことか、カ、カ、カラダをス、スポンジ代わりにとかしていちゃいちゃ密着してたってなんにもおかしくない……」
「は、はわわわ……///」
「私達はあの家の中で普段行われてる出来事なんて何も知らないのよ……外に見せる部分だけは取り繕って、そこには私達の想像が及ばないようなものすごくいかがわしい光景が広がってるかもしれないじゃないっ!!」
「っっ!! だ、だめですよリシアちゃん……そ、そんな、お、憶測で真衛さん達の私生活を決めつけたりしたら……」
ルリトは一応私を諫めているつもりなのだろうけど、その声はか細くて顔は真っ赤に染まっている。かわいい、今すぐ抱きつきたいわ。でも説明を続けるために、とりあえずその衝動は一旦しまっておきましょう。
「こういった箕崎真衛のえっちな行為ばかりがまかり通るなんて許されないわっ。そこで私はもう少し、箕崎真衛のよわ――弱点を探ろうと思っているのっ」
「じゃ、弱点……ですか?」
「そう。私自身が異性だからどのくらいなのかはっきりとは把握できないけど、私がルリトと一緒にいてこれだけ幸せなんだから、あれだけの異性に囲まれて過ごす箕崎真衛はその何倍も恵まれた環境なはずなのよっ。弱点くらい知られてないと不平等でしょっ?」
「…………つまり、リシアちゃんは真衛さんが自分より幸せそうで羨ましいからちょっとでも――」
「ちっ、違うわよっ! あくまでいかがわしい箕崎真衛への償いの一種でその……そっ、そう! 防衛手段! ルリトに箕崎真衛が毒牙を向けてきた時の抑止力にもなるからっ!」
「……えっと、あんまりやりすぎないでくださいね……? 真衛さんがかわいそうです……」
「わかってるわ、あいつには助けられたこともあるわけで別に恩義を忘れた訳じゃないし、そこまでひどいことをするつもりはないのよ。弱点を探る手段もこれから考えるんだけど……」
「女の子の服を着させて写真を何枚も撮り続けるって、すでに十分なことをしているような……」
「――それならば、やはり観察を第一歩とするのはいかがでしょうか……?」
「っ、和葉……」
私が考え込む格好をしてからすぐに紅茶を持ってくるために部屋を離れていた和葉が現れて話に参加してくる。いったいいつから聞いていたのかしら。
「箕崎様と行動を共にする時間が増えれば、おのずと内面を知る機会も増えるでしょう。弱い部分をさらけ出すのも時間の問題かと。例えば遊びに出かけるだけでも、リシア様より苦手なものがあるかもしれませんわ。私も箕崎様の弱点なら知っておきたいですし?」
「か、和葉さん……」
「ふむ……まあ地道だけどやってみようかしら。ゆずは達とも遊べ――」
そこで私は言いよどむ。まあ言いかけた私の言葉が続かないから、ルリトに不思議がられはするわよね。
「リシアちゃん……?」
「な、なんでもないわ。今言いかけたことは忘れて?」
「もちろんゆずは様達と関わる機会も増えると思いますよ?」
「……もしかしてリシアちゃん、そこまで真衛さんに固執する理由には間接的にゆずはさん達ともっと仲良――」
「そっ、そんなこと別に……! ただちょっとまだ箕崎真衛やルリトと一緒にいるときでしか話したことないし……。だから、そのえっと……ルリトも、ついてきてくれるんでしょ……?」
「っ…………はいっ」
誤魔化せたかどうかは実のところわからないけれど、今のルリトの表情は、なんだかすべて見透かされ納得されたかのような微笑みだったのって、気のせい……よね?
「見てなさい箕崎真衛っ! みんなから慕われてるおとなしめで優しい印象だけなんてことあるはずないわっ! ネガティブな要素を絶対暴いてやるんだからっ!」
私は箕崎真衛の本性を探るため、決意を新たに意気込むのだった。
「和葉さん……わたし、ちょっぴり心がズキズキします……」
「リシア様にその気はないのでしょうけど、今の言葉ってお嬢様にも思いっきり突き刺さってますからね……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます