第107話 慣れかけた日常に。驚き混じった帰り道

 放課後になり帰り道を歩く僕達の中には今まで存在しなかった女の子が混じっている。わざわざ迎えにくるセリアさんを断って一緒に歩くことを選んでくれた彼女はまだまだぎこちなさが残っているけれど、主に真実とか時々このみちゃんと他愛ない会話を繰り返していた。

 真実から聞いた話で昼休み伝えたいことを真実なりに何とか伝えることが出来たらしい。こうした反応が返ってくるまで真実はどことなく寂しげな表情も見せていたけれど、今ではその不安が払拭されたかのように真実らしさを取り戻している。僕はそんなリシアちゃんを含めた三人の触れ合いを少し後ろで見守りつつ、隣を歩くゆずはさんと微笑み合ったりしながら歩いていた。

「っ、ルリトちゃ~ん!」

 真実が一番最初に気付き僕達の歩く先で立っているルリトちゃんへと声をかける。帰る途中に雅坂学園を通るため、その校門前でルリトちゃんと鉢合わせることも度々あって。僕達に気付いたルリトちゃんはいつもと同じように微笑みを向けてくれた。話すには少し遠い距離がだんだんと近づいてくるにつれ一番前にいる真実が再びルリトちゃんへと話し始め、僕達が後ろから混ざる形となるのだろう。少なくともそう思っていたのだ、一番前にいる真実が追い抜かれるまでは――。

「ル~リ~ト~~!!」

 突如聞いたこともない声が――違う、声は聞いたことがあるはず。僕が違和感を覚えたのは、その声色。ほとんど同時にルリトちゃんが倒れそうなほど思いっきり抱きしめられる。

「ず~っと会いたかった! 違う学校だったから私なかなか緊張も解けないしさみしくて……。今からは一緒にいられるんでしょ? どこか遊びに行かない? ルリトの好きなところだったらどこまでもついていくからっ」

「りっ、リシアちゃん!? あのっ、えっと、と、とりあえず、そのっ、たっ、たおれちゃいますっ」

「「「「…………」」」」

 僕を含めゆずはさん、このみちゃん、真実も視線を合わせつつ小さく開いた口が塞がらない。リシアちゃんはルリトちゃんを倒さないように勢いを落としたけれど、相変わらずルリトちゃんにぴったりとくっついている。

「ル、ルリトちゃん……」

「っ、ええっと……わたしも最初は驚きましたけど、とりあえず、帰り始めましょうか……」

 ようやく絞り出したかのような真実の発言にルリトちゃんも苦笑いぎみで答える。僕の中にもまだまだ戸惑いが燻りつつ、それでも受けた当時よりは衝撃が徐々に薄れていってくれた。

「ふふふっ、ル~リ~ト~」

 今まで片鱗すらも見せなかったリシアちゃんが浮かべる満面の笑み。だけど僕には見覚えがあった。一度だけ見たことのある亀裂の入った写真、それに写る小さな女の子を表情はそのままに大きくしたような。僕の目には、彼女がそうも映っていて。波乱万丈の生活がようやく日常に感じられてきた僕だけれど、僕の驚くような出来事は、もしかしたらまだまだ続いてゆくのかもしれなかった――――。

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