第6話 愛音とアイオン



愛音とアイオンは生まれた時から一つだったし、二つだった。鼓動が張り裂けそうだったし、和らいでもいた。そういう関係だった。


戦闘が得意な愛音。理知的な考えを持ったアイオン。同一人物であって、お互いに反対の素質を持った少年。


アイオンが朝と言えば、愛音は夜といい。愛音が緑といえば、アイオンは白といった。ただ一つを除いて、彼らは悲しくなるほど似ていなかった。



「ユニオン! もうたつのかい?」

「このままずるずるいると、引き込まれてしまいそうだったから」

「僕はてっきり、“僕”に渡された書類を見てひよったのかなと思ったよ」


少年は、ノックもせずに入ったユニオンの部屋をぱたりと閉めながら、クスクス笑うのであった。


「経済力が政治力が違うのだから、最初から勝てるなんて微塵も思ってないわよ」

「それでもあの国がいいんだね」

「負けたから嫌いになるってある?」

「さあ、人によるんじゃないかな」

「私はないわ。ゼロにもアイオンにも同じことが言える」

「僕は負けたり弱いやつが大嫌いだよ」


満面の笑みで宣う愛音に苦笑いのユニオン。綺麗にまとめられた書類を宰相に突き返して、数少ない荷物を整頓して彼女は窓を開ける。


「もう二度と会えないかもしれないけど、さよなら」

「また会えたらいいね」


20mくらい高さのある窓から落下していく。景色が素早く流れていく。このまま落ちたら、死は間逃れないはずなのに、彼女は余裕綽々な表情を浮かべている。


チッ、なにかが掠れるような音がした瞬間、一匹の青毛の馬がユニオンを掬い上げて、そのまま夜空へと消えていった。

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