第5話 アイオンとユニオン
「ユニオンはいつまでここにいるんですか?」
朝稽古と朝食が終わり、中庭で一服している彼女にまだ齢12歳の少年が尋ねる。紅茶を飲む手を止めて、日差しの強い方へ目を向けると鳥が10羽ほど餌を探しているのが見えた。
「そうね、そろそろ戻らないと怒られるから、今晩立つかな」
「ゼロがまた寂しがります。いっそ寝返って帝国側につけばいいものを」
「アイオンのお願いじゃなくて?」
ふっとユニオンは息をつくと、アイオンは目を丸くして今返された言葉の意味を理解する。慌てた様子で持っていた書類を整えて、顔を赤らめる少年はとても帝国の宰相には見えない。
現在、帝国はユニオンの出身国であるジルヴァーナ王国を植民地にしようと企んでいる弱小国が襲撃を受けて陥落した話も古くない。奪えるものは全て奪う志向の帝国と自然を愛し、調和を齎す神を信仰する王国とは真逆の存在。そんなユニオンとゼロらが何故いっときでも同じ時を過ごしているかは後程語るとする。
「僕はユニオンが居てくれたら、戦いが楽になると思っています!」
宰相が力強く発言するとすぐそばの鳥たちは驚いて飛びだってしまった。中庭に反響する声。ユニオンはその様子をにこにこと眺めて、ばつが悪そうなアイオンは俯いて小言を言っている。
「さて、休憩もそろそろ終わりにして何か手伝うことはあるかしら?」
「僕はこれから会議なので、その間にまとめておいてほしい書類があります」
小脇に抱えていた、いやに綺麗に整えられた書類を渡される。その題目を見て、ユニオンの瞳の奥が一瞬曇ったが、すぐ元に戻り宰相に気付かれることはなかった。
「いい性格してるわね」
「王国襲撃に必要な大事な書類ですから、ちゃんとしてくださいね」
それでは、とアイオンはローブを翻して暗闇へと消えて行った。
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