5 喪の作業
館内アナウンスの声が静かに響き、親戚たちが動き始めた。これから遺骨を拾うという作業が始まる。
「逃げるなよ。最後くらい、ちゃんと見送ってやらないと」
兄が小声で釘をさす。
「わーってるよ。ばあちゃんの時みたいにガキじゃないんだから」
俺はブレザーの裾をはたいて皆に続こうとした。ふと横を見ると、タカシが困ったようにもじもじしている。
「じいちゃんの骨みるのが怖いか、タカシ」
「べ、別に」
明らかに強がっているタカシの背中を、俺はポンと叩いてやった。
「いや、怖がったっていいんだ。けど、ちゃんとお別れはしてあげないとな。でないと、ずっと心の中にじいちゃんに済まない気持ちが残るぞ。儀式とか、決め事とか、めんどいけどさ。こういうのは生き残った者の気持ちの整理のためにこそあるんじゃね?」
タカシは驚いたように俺を見上げ、わかった、と言って大人たちに紛れていった。
「よっく言うよな」
兄が冷やかすように俺を見ている。
「ああ、言うよ。悪い?」
俺はニヤと笑って扉に向かった。
そう。六年前、祖母の死をどう受け止めていいのかわからず、俺は喪の作業をすっぽかしてきたんだ。けど、もうそんなことはしない。静かに祖父を送り出してやろう――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます