5 喪の作業


 

 館内アナウンスの声が静かに響き、親戚たちが動き始めた。これから遺骨を拾うという作業が始まる。

「逃げるなよ。最後くらい、ちゃんと見送ってやらないと」

 兄が小声で釘をさす。

「わーってるよ。ばあちゃんの時みたいにガキじゃないんだから」

 俺はブレザーの裾をはたいて皆に続こうとした。ふと横を見ると、タカシが困ったようにもじもじしている。

「じいちゃんの骨みるのが怖いか、タカシ」

「べ、別に」

 明らかに強がっているタカシの背中を、俺はポンと叩いてやった。

「いや、怖がったっていいんだ。けど、ちゃんとお別れはしてあげないとな。でないと、ずっと心の中にじいちゃんに済まない気持ちが残るぞ。儀式とか、決め事とか、めんどいけどさ。こういうのは生き残った者の気持ちの整理のためにこそあるんじゃね?」

 タカシは驚いたように俺を見上げ、わかった、と言って大人たちに紛れていった。

「よっく言うよな」

 兄が冷やかすように俺を見ている。

「ああ、言うよ。悪い?」

 俺はニヤと笑って扉に向かった。

 そう。六年前、祖母の死をどう受け止めていいのかわからず、俺は喪の作業をすっぽかしてきたんだ。けど、もうそんなことはしない。静かに祖父を送り出してやろう――


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