現代剣士と魔王殺しの勇者の英雄幻想

@intetumusume

OP 勇者の仕事収め

――勇者は戦った。ただひたすらに戦った。


斬って斬って斬ってひたすらに斬り紡いで……。そうしてこれでようやく終わり。


これが結末だ。


七人の英雄も勇者を残し全て死んだ。…その勇者も今まさに死に絶えようとしている。

身体中の血液を絞り切り、肉体を動かす為のエネルギーは残っていない。

カロリーを消費しきり、気力で補える領域は遥かに通り過ぎている。


限界を超えて動ける様な状態じゃない、いや…むしろ限界を超えて戦い抜いた結果が今だ。



そうして合計二百五十四体に及ぶ魔王、それを統率する大陸の半分を消し去り荒廃させた大魔王、その全てはこの時打ち倒された。



「はは……これで……終わり……だ……。」


そう思うと身体と魂を繋ぎ止めていた何がが遂に振り切れ全身の力が抜け地面に身体が崩れ落ちる。

起き上がる事も出来ず死の感覚に襲われるがそれに恐怖する余裕なんて今の勇者にはありはしなかった。


「さすが……に…つか……れ…た…な……。

 あ…ああ……、いつから…だっけ……こん…な……気を張ら…ずに……済んだ……のは……」


魔王殺しを30超えた辺りから一度もその手から離れる事の無かった剣も遂に柄ごと砕けもう役割は終わったかの様に離れた。

未だ成人すら迎える事の無かった少年は子供時代を殺して戦って戦って戦って……ようやく休む事が出来た。


(あ……あ…でも……アイツ……置いて……きちゃったな……。せめ…て……最後に……会え……たら……)


そして遂に勇者は力尽きた。


幾万を超える魔物の屍の上に立ち、幾万すら過ぎ去り幾億斬り紡いだ"剣界"の勇者は力尽きた。

竜殺し、魔王殺し、剣の化身、剣神と呼ばれ人類と魔物、その両方にその名を刻んだ勇者はその魔王殺しの仕事を終える事が出来たのだ。


そうして……世界は救われ勇者は死に全てはハッピーエンドだ。たった独り勇者の人生はそう終わるはずだった。



だが神様は――勇者もょもとを休ませる事を赦さなかったのだ。

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