「めぐみ、頑張れ。めぐみ、頑張れ」
思わずそう呟いていた。
エクスカリバー振り回したり、食人鬼だったり、春が来たり、骨になったり、マッチョだったり、様々な作品を書いてきた大澤めぐみが犬を書いた。
思えば彼女の作品には常に人間の醜さや情けなさと裏返しの美しさを描いてきた。それは繊細な感性が感じ取る人間の可能性であり、つまるところ彼女は常に人間の可能性を描いてきたのかもしれない。
ジェイクは犬だ。
犬に過ぎないジェイクだって、賢さを手に入れることで北の大地へと向かい、名誉と力を手に入れ、無限の未来へと羽ばたける。振り返って人はどうだ?
人だって同じだ。
人間は火をつけ、車輪を回し、活版印刷で言葉を紡いだ。賢さは昨日を今日に、今日を明日に回していく力だ。
力だった筈なのだ。
人は今、賢さ故に自らの文明や人そのものを損なおうとしている。そんな時代に、人の中には自ら賢さを捨て、豚となることで生き残ろうとしている。あえて非難はするまい。それもまた生き残りのための手段だ。
だがその前にジェイクの跳躍を見て欲しい。いや、沢めぐ作品のこじらせた人々を見て欲しい。どうしようもない奴らの、どうにかしようと手を伸ばしもがくその姿を。
私もニュータイプとして人の心に光を見せる使命を思い出すことができた。君達はどうだ?
小型ミノフスキークラフトが起動した。新型のサイコフレームも調子は良好だ。ファンネルのエネルギー充填は完璧。ア・バオア・クーが終わってから生まれたジオン残党の私には勿体無い最高の装備だ。
このメッセージを見る頃には、私はもうこの世には居ないかもしれない。だが言葉は残る。光もまた、其処に残ると信じて、私はペンを置く。
「ネオ・サイコミュ搭載型ヨンダム! 行きまーす!」
かつてジオンを壊滅に追いやったものと同じ純白の機体は宇宙(ソラ)を切り裂いて星々の間を飛ぶ。
これが光であると、人へ謳うように。
【既読戦士ヨンダム~今日の進捗は無い~ 続く】