エピローグ

 あれから、何年の月日が経ったんだろう?私とワタルくんは、ベスト王国の地に立っていた。

「そらちゃん、ワタルくん!いらっしゃい!!」

「サクラちゃん!」

 あれから、サクラちゃんはベスト王国の再建を果たし、今ではアンジェロ王国に劣らない程栄えている。移住して来た人ばかりではあるけど、ある人たちにとっては故郷のような場所になってる。

「フウさんどちらにいますか?」

「稽古しに来たんだよね。フウくんは今、騎士団の詰め所にいるはずだよ。行ってみて。」

「ありがとうございます!」

 そう言って、ワタルくんは行ってしまう。もう、その為に来たんじゃないのに・・・。

「サクラちゃん、実はまた明日ここに男の子が来るんだけど。」

「あ、もしかしてその打ち合せ?ちょっと待って、応接室に行こう。」

「うん。」

 そう言って私たちは応接室で話す。

 ここ、ベスト王国は、犯罪孤児の受け入れ場所となっていた。最近だと、犯罪に巻き込まれて両親を失ったり、親が犯罪者だったりしても、親族で受け入れてもらえない子が多い。だからと言って、MAEで受け入れるのも限界がある。そこで、元職員が再建している国で受け入れ、その国の国民にしてしまえば一石二鳥だ、という事でベスト王国での受け入れが始まった。そして、サクラちゃんたちが辞めてしまった後本部への移動命令を受けた私たちが、受け入れの係を担っていた。

「なるほど、だいたい分かった。明日はみんな時間あるからいつ来ても大丈夫だよ。」

「良かった。また時間決まったら連絡するね。」

 受け入れてもらう子の説明が終わって、係としての仕事は終わったけど、まだ少し時間あるんだよね。

 なので、大事な話をしよう。

「あの、サクラちゃん。これ、お仕事とは関係ないんだけど、いいかな?」

「ん?いいよ。何かの相談かな?」

 う〜ん、相談と言うより報告とお願いなんだけど・・・。

「あの、実は私たち、結婚する事になりました。」

「え!?い、いつの間に!!」

 私がそう言うと、サクラちゃんは少しあたふたする。

「け、結婚式とかは挙げるの!?」

「う、うん。」

「ど、どこで?やっぱり、アンジェロ王国?」

「あ、それなんだけど・・・。」

 そう言ってたらバタバタと誰かが走って来る音。もしかして、ワタルくんも言ったのかな?

「サクラ!!来週の結婚式のために今から準備しよう!!」

 バンッと大きな音を立ててフウさんがそう入って来る。後ろにはワタルくんもいた。

「え?ら、来週?アスカちゃんたちの結婚式はまだ先じゃないっけ?」

 あ、そっか、アスカさんたちも結婚するんだっけ。

「いや、ワタルたちの!!」

「え!?そ、そらちゃんそんなに早いの!?」

「う、うん。」

 あ〜あ、バレちゃった。

「え?そらちゃんどこでやるの?」

「えっと、もうアスカさんたちには了承してもらったんだけど、その、ここで・・・」

「こ、ここ!?・・・えっと、ちょっと待ってね」

 サクラちゃん、なんか対応しきれてない?慌ててるの初めて見た。

「つ、つまり、来週ここで、そらちゃんたちが結婚式を挙げるんだね。うん、やっと把握出来た。」

「ふふ、そうだよ。ちゃんと見てね。」

「見るよ!もう、バッチリ見ちゃうんだから!!」

 そう言って、今度は楽しそう。表情コロコロ変わるよね。かわいい。

「そら、その話終わってなかったの?」

「うん。ほら、あの子の話あったでしょ?それ話してて・・・。」

「あ、その事すっかり忘れてた。」

「ちょ!それ忘れたらだめでしょ!!」

 もう、困った人だよね!!

「ごめんごめん。」

 そう言って、ワタルくんは笑う。それを見て、サクラちゃんが笑った。

「さて、ワタル。そろそろ特訓始めるか!」

「はい、よろしくお願いします!」

 そう言って二人は戻って行った。

「ほんと、師弟関係って感じだよね。」

 私がボソッと言うと、サクラちゃんがまた笑う。

「羨ましいな〜。」

 サクラちゃんがそう言う。羨ましいって誰が?ワタルくんたちかな?

「ワタルくんたちが?」

「ううん、そらちゃんとワタルくんが。」

 そう言って、私を見る。え?ど、どこがだろう?

「なんか、おしどり夫婦って感じ、今からしてるよ。」

「それ、サクラちゃんたちもそうじゃん!!」

「そ、そうかな?」

「そうだよ〜!」

 私がそう言うとサクラちゃんは「う〜ん」と言って悩む。悩むことなのかな?

「そう言えば、サクラちゃんたちこそ、結婚しないの?」

「え?わ、私たち!?ま、まだしないよ〜!」

 笑いながらそう言われてしまった。

「え〜?そうなの〜?」

「うん、まだしない。ちゃんと再建できたらするよ。」

 そう言って少し遠い目をする。そっか、まだまだこれからなんだ。

「そっか、頑張ってね。」

「ふふ、ありがとう。」

 そう言って二人で笑う。いつの間にかこうして二人で笑い会うのが習慣みたいになってた。


 考えてみると、色んな事があって、色んな事をして来た。

 それでも、今が幸せなら関係ない。

 きっと、これは

『私たちの指輪が導いてくれたキセキだから。』


不思議な指輪―fin―

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不思議な指輪 雪野 ゆずり @yuzuri

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