第4話 プロジェクトF


俺たちの夜は長い。


今夜はイベントクリエイトサークルの仲間たちで飲み会だ。

お互いの近況を話し合ったり、これからのことを話しあったりと・・・・


ついにわがサークルのムードメーカー・倉敷くらしきが、酔っ払っておとぼけレベルも向上した時。


下半身まるだし・・・は免れたものの、ズボンのベルトをゆるめ、ひょっとこの

お面をかぶり、踊りだした。

「キャー!やっだ―――――!」


男性たちが爆笑するのと対照的に、女子たちの黄色いならぬ、キモイと発する声が絶えない。


俺は、りごたつの下でひっそりと靴下を足でぬぎ、リラックス感を満喫しながら、シーザーサラダをつついている。なんてことない。倉敷らしいことだ。


だが、そんな空気を切り裂くような気まずい雰囲気になろうとは・・・


「ヨコー、横にすわっていい?なんつってー」

倉敷が、余興よきょうから帰ってきた。そして、横島よこしまのとなりにドカッと座った。


横島は、ふだん感情を顔にはあらわさない奴だが・・・・

今回、いや、表情に変化があらわれている。

横島が、怒っている・・・ようだ。

目に影をたくわえ、死神しにがみでもみるような目つきで・・・口を開いた。


「なあ、倉敷さあ・・・お前、人殺しといてなんでそんなにヘラヘラ

していられるの?」


・・・・・・・・


あたりが静まりかえった。当然、倉敷も。

横島のその言葉はもっともらしい、あるいは、その言葉は本人にとってタブー、

ましてやこの席で言うのも場違いだ。これでも俺たちの仲間なのだから。

その想いもあって俺は、フォローを入れる。


「あのなあ横島、こいつはあの時、責任感じて自殺をはかったんだぞ?

でも、死ななかったんだからしょうがないだろ。生きるしかないんだよ、」


上手く言えない。火に油を注いでしまったのでは?

そのこともあって、峰岸みねぎし部長がとおくで首をふって、俺にこれ以上言わない

ほうがいい、と教えてくれた。俺は黙る。


倉敷も、うつむいていた。そして、ようやく口を開く。


「・・・・僕は、僕はね・・・・娑婆ここへ出てから、昔の自分がいなく

なるのが・・・明るいキャラの自分は、もう死んだんだって、・・・・

みんなから、思われるのが・・・こわくて・・・こうして、バカやってることで、

みんなを・・・自分を・・・・安心させたい一心いっしんで・・・」


嗚咽おえつをもらすように言葉を紡いでいく。

倉敷の気持ちはわかった。そりゃあ、罪を見逃すわけにはいかないが、

計り知れない事情もあるのだ。俺も、そんな前科ぜんかを持っているやつを

いまだに仲間だ、と言えるはおかしい、と思われるかもしれない。


しかし、仲間である以上、俺たちにも責任があるのだ。

こいつが納得いくように、胸を張って生きていけるように支えてやる。

その力は、微量だが。


「えー諸君のみなさん!」


!―――部屋に一喝いっかつするような声がひびく。


それは、山縣やまがた先生の声だった。


険悪けんあくな雰囲気になるようなことはひかえていただきたい!!」


と、一息おいて声のボリュームをあげて言った。


「彼だって・・・倉敷くんだって、もう十分反省している!

あとは、われわれが責任を持ち、彼をささえてやることが我々の使命。

無事に社会復帰させてやろうではないか!」


と、俺が言いたかったことも言った。いいとこどりか。まあ今回だけは大目に

見てやるよ。


それからみんな今一度、拍手を先生に贈った。

なぜか・・・あの横島ですら拍手をしていた。顔は無表情だった。


あやめは倉敷に寄りい、ハンカチをわたした。

「さあ・・・・涙をふいて、もう一度バカやって笑わせてよ」

「・・・迷惑かけて本当にすみませんでした。」


さあて、飲みなおしだ。


下村しもむら北島きたじまの漫才が始まる。


パチパチパチパチ・・・・拍手で出迎える。今日は拍手してばかりだ。


「え~~~~」下村が切り出した。そうそう、ふたりはもう

お笑いコンビを組んで芸能界に出て、2年目だ。それに関して、


「えーみなさん!」


今度は、山縣のじいさんじゃない。峰岸部長だ。


「今日みなさんにお集まりいただいたのは、この席をお借りして、


もう一度みなさんとサークル活動をしたいと思ったからです。


今日は、そのお願いに来ました!・・・・・これから、3日間のあいだだけ、


みなさんにお仕事をしていただきたい。その名は―――――――――



――――――――――――プロジェクトエフ。」

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脳波探偵ギャラクシーF(ファイナル) 黒田真晃 @fykkgoghhlhl

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