第3話

夜、詩人は月の下に在った。

師走の、この年最後の月は

最も雄大ながら深く優雅さを

たたえていた。


詩人は月の下に在り、

自分という存在はなんと小さく

儚いものか、と思いながら

その儚さでただ、美しい響きに

心を寄せ、愛を祈り、時に

愛を求め、悲しみに暮れても

奥底から胸を温める愛が

その愛を決して失わないことを

誓い、愛し続けることを誓った。


小さな茶色い犬はその傍らで

月を見上げた。彼女は光を

遠く感じたがそれでもその光が

尊いものであると理解していた。

静かな深く、それでいて熱を

帯びた自身の世界に揺らめく

愛する主人の姿を誇りに思い

側にいることに安堵し眠った。


この月が

毎夜と私を澄んだ世界に

誘う。


そして

毎夜、月を見つめることが

なくとも


雨夜の意味も

雲に敷き詰められた夜も

意味があると感じるのは


あなたを愛しているから。



ガイルは

詩人の白く細い

美しい首筋に静かに手を

置いた。

詩人のぬくもりが

ガイルに伝わる。


詩人は愛する人を思い浮かべ

ながら、ガイルのおおらかな

安らぎの気配を感じていた。


あなたの愛は

決して消えはしない。

そして

あなたの言葉は

たとえ千と万と

人々に賞賛されなくとも

あなたの言葉に出会うことで

心に触れることで

夢見る旋律を思い出す

一握りの人に与えることが

できる。

与えるあなたに神の加護と

深き大いなる愛が永遠である

ことを。


ガイルは詩人の頭を

そっと撫でた。


詩人の眉間が

とても美しい鮮やかな光を

放った。



私の愛し子よ、

どうか満ち足りた愛の永遠を。


ガイルが息を吹きかけると

詩人の眉間から放つ光が

今宵の月のような金色の

飛沫を上げた。


詩人は

静かな涙を流した。

そして傍らで眠る

小さな茶色い犬の痩せた体を

撫で、その寝息に耳を傾けた。

柔らかい耳に顔を寄せ

流れる涙のままに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る