記憶の流れ

人は成長する。

幼稚園から小学生へ。小学生から中学生へ。そして高校、大学、社会人。

こうやって成長していくにつれ、過去の記憶は薄れていく。


何かの拍子に過去の出来事をふと思い出すことは多々ある。

あなたも今まで生きてきて1度は経験したことがあるのではないだろうか?


「あ、そういえば小さいころにこんな事があったような…」


このような体験は、過去の記憶があり、それが薄れ、そしてまたフィードバックが起こる。この流れによるものだと思う。

そしてこれこそが記憶の消滅は起こっていない事の証明になる。


しかし、あなたは赤ん坊の頃の記憶を思い出すことはあるだろうか?

きっと小学生、中学生あたりから赤ん坊の記憶について話せる人はほとんどいなくなり、高校生にもなると自分が赤ん坊だった事すらまるで作り話のように感じる人も多いのではないだろうか。


そう、この時にはもう記憶が薄れすぎている状態にあるのではないだろうか。

記憶は段々と薄れ、やがては消えかかっていく。

しかし消える直前に何かの拍子に思い出す。

赤ん坊の記憶を思い出すことができない事と同様に、老人が高校の頃の記憶を思い出すこともほとんどできない。

衝撃的な何か、記憶が鮮明に定着するであろう出来事があればまた別の話になるかもしれないが、基本は老人になると高校時代のころの話はできないものだろう。


今、あなたが生きている時間も薄れる時間になり、消えゆく時間になる。

今は必死に鳴る心音も消えゆく音に。

それでも生き続ける。

この時間を消えゆく時間に変えるために。

そして新しい時間に喜怒哀楽を生み出すために。

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僕の毎日~短編集~ トラ @tora_0810

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