ブラウス

ソラ

ブラウス

 ここは美術準備室。

 もう部活の時間も終わり、私と一佳いちかは美術室の片づけを指名された。

 最後まで残り、スタンドや画材などを片付けていた。


 そんなこともほとんど終わり、夕暮れ近くなった時だった。


「やっと終わったね、さあ、帰ろ。」


 と言って準備室を出ようとした瞬間だった。

 一佳がとても強い視線を向けて、私とドアの間に立ち、出てゆくことを拒んだのだ。


 一佳とは、つい一か月前に知り合ったばかり。転校生で、クラスは違ったけれど、同じ美術部で、一佳の方からよく話しかけてきた。


 私は、誰とでも仲良くできる、社交性のある人なんだなと思い、普通の友人として付き合っていた。


 でも、私の前に立って、ナイフを右手に持ち、私のお腹に向けて立つ一佳は、今までのそれとは全く違っていた。


なつちゃん。私、あなたが嫌い。私のないものをいっぱい持ってる。身長もスタイルもかわいらしさも、すべて。」


「そして私の心までも奪うなんて卑怯よ。」


「え?」

 

私はそんな一言しか出なかった。

奪うって、私は普通に友達として接しただけよ。


「私はその夏美ちゃんの胸がすき。」

「その胸を隠すブラウス……嫌い。」


 そう言うと、ナイフを持っていない左手で、襟元のリボンをほどくと、一つずつボタンを外していった。


「やめて……」


 私はそう言いつつも抵抗が出来なかった。

 おそらく抵抗しようとすれば、簡単にナイフなど奪い取り、一佳の行動を取り押さえることは出来ると分かっていた。


 ただ、このシュチュエーションと、『はあ、はあ』と小さくも、荒々しい興奮の吐息を漏らしながら、私のブラウスのボタンをたどたどしく外してゆく一佳の姿に、興味を覚えてしまった。


 スカートの手前までボタンを外しきると、ブラウスはだけ、中央に小さい赤いリボンのついたブラジャーがおもむろに姿を現した。


 一佳は、ナイフの刃を上向きにして、ゆっくりとブラジャーの中央まで持ってゆくと、すっと私の身体とブラの間にナイフの刃を入れ、『ブツ!!』と切った。


 ブラジャーは切り取った中央から両側に開いた。


 私のふくらみの頂点は見えなくとも、その周りの淡いピンク色が少し見えていた。


 一佳はそのままナイフを落とし、自分の顔を私の胸の谷間にうずめた。一佳の前髪が少しくすぐったかった。

 一佳の少し潤んだ唇が、私の胸元に生暖かい潤いを与えていた。

 私はすっと両手を一佳の頭の後ろに当て、なぜか愛おしくなでてしまう。


 私も分からなかった。ナイフで脅され、胸まであらわにされているのに、顔をうずめている一佳の頭を優しくなでてあげるなんて。


 ただ、そうまでして、私のブラウスの中にある乙女のふくらみに、『すべてをかけて欲求をぶつけたかったのね』と思うと、抵抗よりも、抱擁をしてしまったのだ。


『私の二つのふくらみが、あなたの心のよりどころになるのなら、好きにすればいいわ』と思っている私が不思議だった。


 徐々に一佳の唇は私の右のふくらみの頂上にたどり着く。

 きっとこの後も、なし崩しに一佳に今まで味わったことのない感覚を植え付けられるのだろうと思ったとき、私は逆に期待をしてしまった。


 もう一佳が止まらない限り、私も止められない。



 一佳…… 



 やめて……




 ……ううん、やめないで……


 FIN

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ブラウス ソラ @ho-kumann

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ